でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > 調査報告 > 鹿児島県における令和6年産でん粉原料用さつまいもの生産状況などについて

鹿児島県における令和6年産でん粉原料用さつまいもの生産状況などについて

印刷ページ

最終更新日:2025年11月10日

鹿児島県における令和6年産でん粉原料用
さつまいもの生産状況などについて

2025年11月

鹿児島県さつまいも・でん粉対策協議会

【要約】

 鹿児島県における令和6年産さつまいもは、作付面積は減少したものの、サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の抵抗性品種への切り替え、防除対策の実践などの取り組みが進んだことから、10アール当たりの収量が増加し、生産量は21万8300トン(前年産比1.3%増)で、このうちでん粉原料用さつまいもの生産量は3万6800トン(同6.8%減)であった。

はじめに

 鹿児島県におけるさつまいもは、本県普通畑の約15%に作付けされており、夏場の土地利用型作物として、輪作体系や防災営農の面から重要な作物として位置付けられている。また、でん粉や焼酎などの原料用をはじめ、青果や菓子(加工)用として幅広く利用されており、地域経済を支える面からも重要な作物である。

 本稿では、令和6年産原料用さつまいもの生産状況やでん粉工場の原料確保、当協議会における生産振興に向けた取り組みについて報告する。

1 令和6年産さつまいもの生産状況

(1)作付面積

 令和6年産の作付面積は、農業者の高齢化に伴う労働力不足やサツマイモ基腐病(以下「基腐病」という)発生の影響などにより、前年産より300ヘクタール減少し、9490ヘクタール(前年産比3.1%減)(図1)となったものの、全国の作付面積3万1800ヘクタールのうち約3割を占め、全国第1位であった。このうちでん粉原料用の作付けは、県全体の約17%を占める1600ヘクタール(同12.1%減)であった。
 
1

(2)生産量

 令和6年産のさつまいもは、作付面積が減少したものの、基腐病の抵抗性品種への切り替えや防除対策の実践など、ほ場に基腐病菌を「持ち込まない」、「増やさない」、「残さない」という3つの対策について総合的な取り組みが進んだことから被害が減少し、また、おおむね天候に恵まれたこともあり、いもの肥大が順調に進み、10アール当たりの収量が2300キログラム(前年産比6.0%増)となったことから、生産量は21万8300トン(同1.3%増)となった(図2)。
 
2

(3)用途別生産量

 鹿児島県におけるさつまいもの用途は、でん粉原料用と焼酎原料用が全体の74%を占めており、令和6年産におけるでん粉原料用の生産量は、全体の17%となる3万6800トン(前年産比6.8%減)、焼酎原料用は同じく57%となる12万3995トン(同13.8%増)となった(表)。
 
3

2 でん粉工場の原料確保

 鹿児島県内のさつまいもでん粉工場は、主産地である南薩、大隅、種子島地域を中心に、農協系2工場、民間11工場の計13工場が操業している。令和6年産のさつまいもの生産量は、前年産から1.3%増加したものの、でん粉原料用さつまいもは、前年産と比較して6.8%減少し、計画数量の確保には至っていない状況である。

 これは、他の用途におけるさつまいもの販売価格高騰により、でん粉原料用からその他の用途向けに移行したことなどが要因と考えられ、でん粉工場では安定的な原料確保が課題となっている。

3 生産振興に向けた取り組み

(1)用途別原料確保対策

 本協議会では、でん粉工場や焼酎メーカーに対し次年産のさつまいもの需要量調査を行い、令和7年2月に「地域別の原料用さつまいもの需要希望量」として取りまとめ、地域段階において情報共有し、需要に見合った計画的な生産を推進している。

 また、「原料用さつまいもの用途別確保方針」を策定し、同方針に基づき、栽培面積の拡大や契約栽培・契約取引の推進に取り組んでいる。

 この他、でん粉原料用として出荷を予定している生産者に対しては、独立行政法人農畜産業振興機構鹿児島事務所の協力のもと、同機構が実施するでん粉原料用いも交付金による支援(図3)などを周知しており、令和8年産についても同様の取り組みを行うこととしている。
 
4

(2)基腐病対策

 基腐病は、沖縄県に次いで、平成30年12月に本県で確認されて以降、令和7年9月末現在、36都道府県で発生しており、全国的に広がりを見せている。

 鹿児島県では、基腐病対策を着実に推進していくため、令和4年1月に策定した「鹿児島県サツマイモ基腐病対策アクションプログラム」(以下「アクションプログラム」という)に基づき、ほ場に基腐病菌を「持ち込まない」、「増やさない」、「残さない」3つの対策を、関係機関・団体と一体となって総合的に推進している(図4、5)。

 また、本協議会では、近年、一部のほ場で発生が見られている基腐病以外の腐敗症状やムツスジアシナガゾウムシなどの病害虫への対策について、生産者や関係機関へ周知を行ったところである(図6)。






 
5

おわりに

 鹿児島県では、アクションプログラム策定後の令和4年産以降、生産者による基腐病対策の実践が進んだことにより、基腐病の発生は減少してきているが、基腐病以外の腐敗症状などの新たな病害虫対策も課題となっている。

 また、10アール当たりの収量は近年増加傾向にあるが、基腐病発生以前の水準まで回復しておらず、県内のでん粉工場の需要に対応し切れていない現状がある。

 本協議会としては、引き続き、関係機関・団体と一体となって、基腐病などの病害虫対策や、多収で基腐病抵抗性の強い品種の普及などによる増産に向けた取り組みを推進し、生産者の安定的なさつまいも生産につながるよう取り組んでまいりたい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272