平成28年度第1回さとうきび試験研究委員会に出席
最終更新日:2016年12月7日
2016年11月
平成28年11月16日(水)、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会主催の平成28年度第1回さとうきび試験研究委員会が、種子島で開催された。
さとうきび新品種の育成に当たっては、国・県の試験場での試験に加えて、気象条件や土壌条件が異なる各島での適応性を確認するため、種子島、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の6島で、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターなどで選抜された有望な系統について、生産力検定試験を行っている。
生産力検定試験では、原料茎数、原料茎長、原料茎径、原料茎重、甘蔗糖度などの各項目について、鹿児島県の奨励品種で標準品種としての農林8号と配布系統の成績を比較する。
同委員会では、試験の進捗状況について各島から報告を受け、各島での新系統の生産力について検討する。毎年、各島の持ち回りで開催し、今年度は国・県の試験場がある種子島で開催され、試験研究委員10名と各島の担当者及び関係者43名が参加した。
午前中に行われた現地検討会では、種子島の試験ほ場を回り、既存の奨励品種と配布系統の生育状況を、実際に目で見て、確認した。
鹿児島県では、農林8号、農林17号、農林18号、農林22号、農林23号、農林30号、農林32号がすでに奨励品種となっている。また、平成28年7月には農林27号が奨励品種として選定され、今後、奄美地域を対象に普及する計画である。
試験場には、奨励品種とともに、まだ品種として登録されていない試験段階のさとうきびの系統が栽培されている。この中で特に生育の良い系統が、品種として登録され、その中でも鹿児島県に適しているものが、県の奨励品種として選定される。
国の試験場(九州沖縄農業研究センター)では、KR08-84やKR06T-560の生育が特に良好で、参加者の関心を集めていた。
現地検討会ではさとうきびの生育状況を確認
午後の室内検討会では、生産力検定試験と、最近の生産動向について、各島から報告があった。
林満委員長は開会のあいさつで、「今年の種子島のさとうきびは立派に育っていた。また、他の島でも生育は良好と聞いている」と述べ、また、「農林27号も鹿児島県の奨励品種となり、平成30年度から種苗が配布される見通しである」と、今後の生産振興に期待を見せた。
林満委員長のあいさつ
つぎに、配布系統の生産力検定試験の中間成績について、各島から報告があった。
熊毛地域にある各試験場及び種子島糖業振興会からは、熊毛地区に配布されたKR08-84、KR05-619、KR06T-560などについて、また、大島地域にある試験場や各島生産対策本部などからは、大島地区に配布されたKY10T-518について、それぞれ試験結果の報告があった。
また、品種別の収穫面積の推移や栽培型の割合、新品種育成の要望について、各島から報告があった。今年はさとうきびの生育が良好で豊作が見込まれており、4島で製糖工場が年内に操業を開始することから、これからも収量を安定させ、年内操業の定着を図りたいと、増産に意欲的な意見が出されていた。
一方、栽培品種について、「以前主流だった農林8号の収穫面積の割合が低下し、農林22号や農林23号といった新しい品種が増加している。しかし、現行では、農林8号の栽培暦を準用して、他の品種を栽培しているため、その品種独自の栽培暦を作成するなど、情報の整理が必要になってきている」との意見もあった。
また、栽培型についても「高齢化により夏植え時の労働力が不足しており、多くの島で株出割合が増加傾向にあるため、春植え、夏植え、株出しの三栽培型のバランスの見直しが必要」と多くの島が報告した。
最後に、古江広治副委員長が「多様な品種が出てきたなかで、品種の栽培方法などのマニュアル化までは追いついていないのが現状である。担当者の目で見た情報を記録し、品種化の際にうまく情報を伝達できるように、試験のあり方を検討していきたい」と述べ、閉会となった。
高齢化による労働人口の減少やハーベスタ収穫といった機械化が進展するなど、さとうきびの生産環境が変化しつつあるなか、各島からは生産の実情にマッチした品種の開発が望まれているようであった。本委員会における今後の検討に期待したい。
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