平成30年度さとうきび生産振興シンポジウムの開催について
最終更新日:2018年12月6日
那覇事務所 針ヶ谷敦子
11月13日(火)に、JAおきなわ南風原支店内のホールにおいて、平成30年度さとうきび生産振興シンポジウムが開催された。
このシンポジウムは、さとうきび生産者を対象に生産者の栽培事例や関係機関の取組等を紹介することで、増産に役立てることを目的に沖縄県が主催し、生産者のほか、製糖工場、JA、行政関係者も出席した。
沖縄県農林水産部の仲宗根智農業振興統括監からシンポジウムの目的等挨拶があった後、関係機関からの情報提供、生産者の取組事例の報告及び当日の発表者全員が参加したパネルディスカッション・質疑応答が行われた。
シンポジウムの様子
情報提供
1.「これからのさとうきび機械化に関する提案」
新里良章主任技師(沖縄県南部農業改良普及センター)
農家の高齢化や担い手不足等によるさとうきびの生産量減少の対策として、多量生産法人と作業を請け負う受託組織が必要であり、経営を安定化させることが重要であると報告された。また、労力に加え燃料消費量を抑えることが期待できる牽引型作業機の利用を中心とした機械化体系が効果的であることが報告された。
2.「ハーベスタによる採苗が可能なビレットプランタの実用性」
比屋根真一研究主幹(沖縄県農業研究センター)
ビレットプランタを利用すると、全茎式プランタと比べて苗刈りから植付までの作業時間が4割削減するという実験結果について報告された。実際に、手作業・全茎式プランタ・ビレットプランタによる植付の様子が映像で流され、ビレットプランタの速さが実感として伝えられた。また、確実な発芽を目標に効率的にビレットプランタを動かすためには、品種の選定、植付技術の習得等が必要であり、現在も実証試験が続いていることが報告された。
3.「中部地区でのかん水技術普及に向けた取組」
川之上昭彦主任技師(沖縄県中部農業改良普及センター)
かん水の有無によるさとうきびの生育調査結果や映像を通じ、かん水の大切さが伝えられた。また、パレット等を重ねた高い場所に貯水タンクを置き、高低差による自然流下を利用して点滴チューブでかん水を行うなど、水がない地域においても低コストでかん水を行う取組について報告された。これまでの調査結果から、技術の普及や定着への取組を継続していくことが必要であると呼びかけられた。
生産者取り組み事例報告
1.仲本峻氏(宜野座村)
今年4月に表彰式が開催された第42回沖縄県さとうきび競作会において、沖縄県第一位(農林水産大臣賞)を受賞している。同氏から、毎日のほ場観察等適期栽培管理の重要性を述べるとともに、単収増や経費削減、作業の省力化等を考えながら、自作した道具等を用いて補植を重視した多数回(5〜6回)株出しを行っていることが報告された。また、地域で補植の重要性を広めたいとも語られた。
2.比嘉正行氏(那覇市)
茎重型で伸びが良い農林21号を利用し、畝幅を広く取ることで管理作業の軽減を図るといった栽培の工夫について報告があった。また、株出しにおいても単収を落とさないよう必ず補植していることや、補植用苗の栽培法や補植時期などについても述べられた。一茎重2キログラム(茎長3.5メートル、茎径2.7センチメートル)を目標としていたが、茎長4メートル越えも可能なはずだと今後の抱負が語られた。
パネルディスカッション・質疑応答
進行役 伊志嶺正人副参事(沖縄県営農支援課)
これまで発表を行った5者と進行役の伊志嶺副参事が登壇し、出席者からの質問に回答しながら、報告内容についてパネルディスカッションを行った。生産法人の作業受託料や経費等に関する質問や、かん水施設がほぼない本島におけるかん水作業の方法等に関して質問が挙がり、壇上の発表者が意見等を述べ、報告に対する議論が深められた。
パネルディスカッションの様子
おわりに
今回は、生産者・関係機関等、様々な立場からの報告があり、関係者にとって有用なシンポジウムとなった。品種や機械の改良等技術面の向上を継続することはもちろん、実際に技術が普及すると、運用する中で利用法や費用等の課題が発生することから、今後もさとうきび増産に向け議論が必要であることを改めて認識した。当機構としても、引き続き、沖縄県のさとうきび生産及び甘しゃ糖業の発展に寄与してまいりたい。
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農畜産業振興機構 農畜産業振興機構 地方事務所 (担当:那覇事務所)
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