第43回沖縄県さとうきび競作会表彰式及び「さとうきびの日」関連行事の開催
最終更新日:2019年5月30日
はじめに
4月25日(木)に、那覇市内において第43回沖縄県さとうきび競作会表彰式(公益社団法人沖縄県糖業振興協会主催)が開催された。
さとうきび競作会は、生産技術及び経営改善の面で創意工夫し、高単収・高品質な生産を上げた沖縄県内のさとうきび農家を表彰し、農家の生産意欲を喚起して沖縄県の糖業の発展につなげることを目的として、毎年行われている。
また、表彰式に先立ち、「さとうきびの日」(毎年4月の第4日曜日)の関連行事として、嘉数若子氏(沖縄県農業研究センター研究員)及び大見のり子氏(同主任研究員)による記念講演が行われた。
記念講演 1
嘉数氏は、「さとうきび害虫の低コスト化交信かく乱技術の開発について」と題して講演を行った。
さとうきび害虫である、イネヨトウの防除には、合成性フェロモンを利用した交信かく乱技術が用いられているが、防除に必要なロープはコストが掛かること、設置するため労力が掛かることが課題となっている。
講演では、ロープの使用量を標準使用量(4巻/ha)の半分(2巻/ha)及び4分の3(3巻/ha)に減らした場合の試験結果が報告され、ロープの数を現行から4分の3に減らした場合でも、同程度の防除効果が期待できることが示された。
また、同氏が開発したフェロモン剤を揮発する装置を用いた防除効果の試験結果も報告され、ロープに比べ設置労力(設置時間)を5分の1に低減でき、ロープと同程度の防除効果が得られることが示された。
嘉数氏による記念講演の様子
記念講演 2
大見氏は、「八重山地域における黒糖向きさとうきび品種と有望系統について」と題して講演を行った。
これまで分蜜糖工場に向けた品種選抜が中心で、含蜜糖地域の実情に合った品種が育成されなかったことから、含蜜糖地域では、品種が偏り気象災害等、様々な影響を受けやすいといった課題がある。
講演では、同一条件で製造した黒糖の品質評価により、黒糖向きの品種及び有望系統の特性を明らかにした試験・研究について報告され、各島における試験結果を基に、さとうきびの収量、黒糖の保存性、食味評価や色調などの品質の安定性などを考慮して、どの品種・系統が八重山地域に有望であるかが示された。
質問者に対して回答する大見氏の様子
競作会表彰式
農家、奨励農家、多量生産の部、特別優良事例の部において選出された農家14個人・団体が表彰を受けた。
なお、当機構は、多量生産の部における農家の部第一位と生産法人の部第一位に対し、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の授与を行っている。
(1)受賞者の紹介
以下、代表的な受賞者を紹介する。
≪農家の部≫
○沖縄県第一位(農林水産大臣賞)
神谷 忠正 氏(南部地区代表 八重瀬町)
〔審査成績〕
ア 栽培品種:Ni27
イ 作型:夏植え
ウ 蔗茎重量:16,620kg/10a
エ 甘蔗糖度:14.1度
オ 甘蔗糖重量:2,343kg/10a
カ 経営概況:小さい頃から親の手伝いでさとうきび栽培に携わってきたが、自身でさとうきび栽培
を始めたのは7年ほど前である。現在の経営については、苗は、役場の原種ほから提供された
優良種苗を自身の畑で増殖している。
今後は、現在の作付面積を維持しながら、メインで作付けしているNi27以外の品種を植えるな
ど、単収を上げるために取り組んでいく予定である。
神谷 忠正 氏(沖縄県糖業振興協会から写真提供)
○沖縄県第二位(農林水産省政策統括官賞)
吉里 徹 氏(中部地区代表 うるま市)
〔審査成績〕
ア 栽培品種:NiF8
イ 作型:夏植え
ウ 蔗茎重量:16,254kg/10a
エ 甘蔗糖度:13.5度
オ 甘蔗糖重量:2,194kg/10a
カ 経営概況:うるま市勝連さとうきび生産組合に属し、先進地視察研修や肥培管理講習会等に積
極的に参加するなど、地域の模範となる農家である。
梅雨明け後の生育旺盛期には、地下ダムからの農業用水を活用し、十分なかん水を行い、
単収向上に努めている。
今後は、現在の耕作面積を維持しながら、早期高等性の優良品種の導入と適期肥培管理と
夏場のかん水作業を行い、単収及び品質向上に努める予定である。
吉里 徹 氏(沖縄県糖業振興協会から写真提供)
≪多量生産の部≫
○農家の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
松原 永政 氏(与那国町)
〔審査成績〕
ア さとうきび生産量:869,600kg
イ 甘蔗糖度:12.7度
ウ 経営概況:与那国町さとうきび生産組合の副組合長を2期務め、平成29年度からJA与那国支店
の総代として地域の声を代表して発信していくなど、地域の生産環境の改善にも取り組んでい
る。
現在の経営については、栽培面積(約16 ha)が大きいため、補植が容易に行えないことから、
特に新植については、良質健全苗を用いて発芽率を高めることで、欠株の抑止にも創意工夫し
ている。今後に向けて、さらなる単収向上を図る為に圃場の一畦毎に違う品種を植え、同一条
件で同じ栽培方法を行うとどのように成長していくかを比較するなど、与那国島に適する品種を
模索している。
松原 永政 氏(沖縄県糖業振興協会から写真提供)
○生産法人の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
農業生産法人 有限会社サザンファーム(竹富町 西表島)
〔審査成績〕
ア さとうきび生産量:936,000kg
イ 甘蔗糖度:14.5度
ウ 経営概況:同法人は、主にさとうきび栽培面積が約25 ha、水稲栽培面積が約10 ha、南瓜栽培
面積が約2.5 haの規模で生産する農業生産法人である。
西表島はかん水施設の整備が不十分であるため、干ばつ等に強い品種の導入に加え、干ば
つや台風襲来期までに十分な生育を図ることにより自然災害に強いさとうきび作りに努めてい
る。
新品種の導入にも積極的であり、今後も試験的に栽培し生育が良かった品種については、栽
培面積を拡大し安定生産・単収向上を図っていくこととしている。
農業生産法人 有限会社サザンファーム 代表 西大舛 高均 氏 (沖縄県糖業振興協会から写真提供)
他にも、地域でのさとうきび栽培が優良と認められた奨励農家、特別優良事例の部の農家が表
彰された。
(2)表彰式の様子
はじめに、沖縄県糖業振興協会の島尻勝広理事長が挨拶し、受賞者を称え、今後の糖業振興と地域の発展に向けた理解と協力を呼びかけた。
その後、受賞者に賞状及び副賞の授与が行われ、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の受賞者には、当機構副理事長近藤康子から賞状が手渡された。
近藤康子副理事長が賞状を手渡す様子(沖縄県糖業振興協会から写真提供)
おわりに
表彰式には、受賞者の他にJA職員や製糖工場の職員など、糖業関係者が多数出席していた。表彰式後には関係者も交えた記念撮影も行われ、また受賞者を交えた活発な意見交換も行われた。受賞者である農家はもちろん、地域の関係者全員で協力していくことにより、さとうきび農家の生産意欲向上と、さらなる品質や収量の向上に繋がることが期待される。
受賞者集合写真
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 地方事務所 (担当:那覇事務所)
Tel:098-866-1033