第87回沖縄県さとうきび育種委員会(秋期)の開催について
最終更新日:2019年12月24日
はじめに
那覇事務所 小木曽 貴季
11月26日(火)と27日(水)の2日間、沖縄蔗作研究会、沖縄県農業研究センターの共催で第87回沖縄県さとうきび育種委員会(秋期)が開催された。
この育種委員会は、各研究機関や各地域の製糖工場のさとうきび育種担当者等が一堂に会して、沖縄県内の地域、島々に適するさとうきび品種を選定するための検討及び情報交換を行うもので、毎年、春と秋に開かれている。今回は、約60名の関係者が参加し、1日目に石垣市内で成績検討会が行われ、2日目に西表島内で現地視察が行われた。
成績検討会は、沖縄蔗作研究会の村山会長の挨拶により開会し、学識経験者である、杉本明博士や農研機構九州沖縄農業研究センターの田村種子島研究調整監等沖縄県外からも参加があり、活発な議論が交わされた。
成績検討会
成績検討会では、はじめに沖縄県農業研究センターの各試験地(沖縄本島南部、本島北部、宮古島及び八重山地域)の担当者から、それぞれの地域における気象概況及びさとうきびの生育概況について報告があった。
2019年産さとうきびの11月時点の生育状況については、各地域別に以下の通りであった。
〇本島南部地域
春の長雨の影響から、特に春植えにおいて、茎長や生育本数は平年より大きく下回り、ブリックスや甘蔗糖度といった品質の面でも平年以下となった。
〇本島北部地域
春植え及び株出しについて、茎長及びブリックスで平年を上回るものの、茎数及び重量で平年を下回った。
〇宮古島地域
株出しの茎長について平年を若干上回るものがあったものの、夏植えの茎長は平年並みであった。春植え、株出しのブリックスや甘蔗糖度といった品質の面は平年並みであり、夏植えは品質の面で平年を下回った。
〇八重山地域
春植えの生育は平年並み、夏植えについては茎長が長く、株出しについては、茎数が平年を大きく上回り、品質においては、全作型で甘蔗糖度が平年より20%程度高くなっている。
次に、各製糖工場(沖縄本島北部、本島中南部、久米島、南大東島、宮古島及び八重山地域)の担当者から、生育状況についての報告に併せて、各地域に適応した品種の育成を目的とした現地適応性検定試験について報告があった。
各地域に適応する品種については、各地域の状況によってニーズが異なっているようであった。例えば、原料茎数(1aあたりに収穫されたさとうきびの本数)や原料茎重(1aあたりに収穫されたさとうきびの重量)が大きなものであっても、伸びすぎて乱倒伏があるものについては、馬力の大きなハーベスタがない地域では、刈り取りにくいために、敬遠されることもあるようであった。
沖縄県の奨励品種である「RK97-14」について、いくつかの地域の担当者間で意見交換があった。各作型で安定多収を発揮する品種でありながら、茎径が太い等の理由から、馬力の大きなハーベスタがない地域では、機械での刈り取りが難しいために、夏植えでは不向きであるとの意見もあった。
当日の会場内
村山会長による開会の挨拶
成績検討会の様子
現地視察
2日目の現地視察では、西表糖業株式会社の工場及び島内の試験圃場の視察を行った。
西表糖業株式会社では、島内のさとうきび作農家の現況についても説明があった。島内のさとうきび作農家においては、専業農家が2〜3割程度で、兼業農家が7割程度とのことであった。ハーベスタ収穫(機械刈り)は30年産では、15.47%であったが、今年産については、25%程度を見込んでいるとのことであった。機械刈りの割合が増えるため、収穫し易いNi27の植付けが増えているとのことであった。
試験圃場の様子
西表島内のさとうきび圃場の様子
おわりに
今回の育種委員会(秋期)においては、早期に高糖を示す、早期収穫向け系統については、比較的評価し易いが、これに対して、通常収穫向け系統等については、これから糖度が高くなることもあり、11月時点では評価し難いという意見もあり、来年2月に開催予定である次回の育種委員会(春期)での最終的な試験結果報告にも注目したい。
また、育種委員会で検討された系統のうち、特に有望なものが、協議を経て奨励品種候補として選ばれることから、さとうきび生産者や糖業関係者のためにも、増産につながる奨励品種の選定が今後も期待される。
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