ホーム > でん粉 > 生産現場の優良事例など > 原料用さつまいもの品種および生育概況(マルチ栽培)について
最終更新日:2010年3月6日
でん粉情報 |
鹿児島県農業開発総合センター大隅支場
はじめに
前回、8月時点での原料用さつまいもの生育概要を報告しました。今回は鹿児島県で栽培されている原料用さつまいもの品種特性と9月時点での生育概要について報告します。
1 原料用さつまいも品種特性
鹿児島県ではでん粉原料用としてシロユタカ、シロサツマ、コナホマレ、ダイチノユメが順次奨励品種に採用されており、コガネセンガンは焼酎原料用として奨励品種になっている。
⑴ シロユタカ
ア)形状:紡錘形
イ)皮色:白色(頭尾帯紅)、肉色:白色
ウ)特徴:
萌芽数は多く、伸長も早い。地上部生育は旺盛で、肥沃地や多肥条件では繁茂しやすく、その際いもの形状は長紡錘形になって揃いが悪くなる。いも個数が多く、多収となる個数型の品種。県内約3,800haに作付されており、でん粉原料用さつまいもの主要品種である。
⑵ シロサツマ
ア)形状:短紡錘形
イ)皮色:淡褐色、肉色:淡黄白色
ウ)特徴:
萌芽数はやや多いが、シロユタカよりは少ない。萌芽伸長はやや早い。地上部の生育は旺盛である。でん粉歩留りはシロユタカよりも高い。いも個数がやや少なく、1個重が重い個重型の品種。熊毛地域での栽培が多い。
⑶ コナホマレ
ア)形状:短紡錘形
イ)皮色:淡褐色、肉色:淡黄白色
ウ)特徴:
萌芽本数はやや多いが、シロユタカよりは少ない。伸長は早い。地上部の生育は旺盛でシロユタカよりも繁茂する。シロサツマと同様に個重型の品種。栽培上の留意点は、栽培期間(在ほ期間)が長くなるほど、また収穫時期が遅くなるほど腐敗いもの発生が懸念されることで、そのため、早期収穫が望ましい。
⑷ ダイチノユメ
ア)形状:紡錘〜長紡錘形
イ)皮色:白色、肉色:淡黄白色
ウ)特徴:
萌芽本数はやや多いが、シロユタカよりも少ない。萌芽伸長は早い。地上部の生育はコナホマレ同様旺盛である。でん粉歩留りはシロユタカよりも高く、平均粒径も大きい。シロユタカ同様に個数型品種であるがシロユタカよりも個数が多く収量も高い。
栽培上の留意点は、いもの形状が長くなりやすいことで、掘取りの際には注意を要する。
(参考)
コガネセンガン
ア)形状:下膨れ紡錘形
イ)皮色:黄白色、肉色:淡黄白色
ウ)特徴
萌芽数は中程度である。地上部の生育は初期生育は他の品種よりも旺盛であるが、収穫時の茎葉重はでん粉用品種よりも少ない。いも揃いが良く、条溝がやや深いが、外観は概ね良好である。でん粉歩留りが高く、蒸しいもブリックスも高いことから、焼酎原料など幅広い用途で使われており、本県で最も栽培面積が大きい品種である。
2 さつまいも(マルチ栽培)生育概要
⑴ 耕種概要
植 付:4月13日
収 穫:9月10日(生育期間118日間)
栽植密度:90×40cm(2,780/10a)
挿苗方法:8節苗水平挿し
⑵ 気象概況(8月〜)
7月までの概要は前号を参照されたい。
(1)平均気温
8月は月平均で平年よりも1.5℃高く、特に第4旬以降は高かった。
(2)日照時間、降水量
8月の降水量は第1、3半旬は平年より多かったが、その他は少なかった。特に第4半旬以降はほとんど降水がなく、8月の積算降水量は平年の61%であった。また、日照時間は多く、月日照時間合計は平年の154%であった。
⑶ 生育概要
(1)生育状況
7月までは台風の影響などで地上部の生育は緩慢であったが、8月は天候も安定したため地上の生育は回復した。しかし、つる重は平年値と比較すると軽かった。
(2)上いも(1個50g以上のいも)個数
植付け後に降雨があり、活着は比較的良好であった。そのためコガネセンガン1,334個/a(平年比108%)は、平年より多かった。また、シロサツマ862個/a(同98%)、シロユタカ1,286個/a(同98%)、コナホマレ1,091個/a(同98%)、ダイチノユメ1,383個/a(同95%)は、ほぼ平年並であった。しかし、総いも個数は、全ての品種で平年より少なかった。
⑷ 上いも収量
シロサツマ256kg/a(平年比107%)、ダイチノユメ352kg/a(同105%)、コガネセンガン332kg/a(同105%)は、平年に比べやや高かった。しかし、シロユタカ316kg/a(同99%)、コナホマレ278kg/a(同93%)は、平年並みか平年よりも少なかった。収量が高かった要因は、コガネセンガンはいも個数が多かったこと、シロサツマ、ダイチノユメはいも1個重が重かったことである。なお、コナホマレは1個重が軽かったため、平年並み以下の収量になった。
⑸ まとめ
コナホマレ以外の上いも収量は、平年以上か平年並みであり、8月調査時点よりも生育は回復してきている。特にダイチノユメは上いも収量が352kg/aと順調な生育である。
おわりに
今年は、6月下旬から7月中旬にかけての長雨や台風などの影響で初期生育が緩慢でしたが、8月以降天候も安定し、生育も回復してきており、今後も生育が順調に進むことを期待しています。
また、今回紹介した品種の中で、平成15年度に奨励品種になったダイチノユメは収量・でん粉歩留りともに高く、生産者やでん粉工業などに有益な品種です。さらに、今年の生育概要から、天候不順な年でも安定して収量が確保できると考えられます。今後、これまで以上に普及が進むことを期待します。
表1 特性表