ホーム > でん粉 > 生産現場の優良事例など > 北海道におけるばれいしょおよびばれいしょでん粉の位置付けについて
最終更新日:2010年3月6日
でん粉情報 |
[2007年12月]
北海道では、恵まれた自然環境と土地資源を活かし、大規模で生産性の高い専業的な農家を主体とする畑作農業が展開されています。その中で、ばれいしょは他の畑作物と並び輪作体系を構成する作物として全道各地で作付けされ、その生産量は全国一を誇ります。また、国内では北海道だけで生産されるばれいしょでん粉は、ばれいしょの消費において大きな割合を占めており、ばれいしょでん粉の製造業は本道の地域経済において重要な役割を果たしています。ここでは、ばれいしょやばれいしょでん粉の本道における位置付けについて、近年の生産状況などと併せて報告します。
本道の畑作農業においては、連作障害による生産性の低下を回避するなどの目的で、複数の作物を用いた輪作体系が確立されています。ばれいしょは、麦類、豆類、てん菜などとともに輪作体系を構成する基幹作物の一つとなっており、平成17年には、道内の総農家の29%に相当する17,073戸により(図1)、普通畑の14%に相当する55,700ヘクタールでばれいしょが作付けされています(図2)。作付けは全道各地で行われていますが、主要な畑作地帯である北海道東部の十勝および網走地域における作付けが、全体の4分の3程度を占めています。近年は、労働力不足や生産者の高齢化を背景として、労働生産性の高い他作物への転換などにより、作付面積は減少傾向で推移しています。 平成17年産ばれいしょの生産量は全国の78%を占める2,150千トンでした。用途別の仕向量をみると、最も多いのがばれいしょでん粉用で、仕向量は全体の49%に相当する1,058千トンであり、このほか、生食用には312千トン、加工用には437千トン、種子用などに343千トンが、それぞれ仕向けられています(図3)。近年は消費の伸び悩みなどの影響により、いずれの用途も仕向量は横ばい若しくは漸減傾向にあります。
平成17年における本道の農業産出額は、耕種部門が5,642億円、畜産部門が5,018億円、合わせて1兆663億円であり、ばれいしょは耕種部門の12%に当たる699億円に上ります(図4)。
このように、ばれいしょは本道の畑作農業の基幹作物であり、多くの生産者が各地で作付けしているほか、農業産出額において一定の割合を占めていることからも分かるように、本道にとって欠くことのできない作物となっています。さらに、生産されるばれいしょの半分がでん粉原料用に仕向けられているという点で、本道におけるばれいしょでん粉の生産は、ばれいしょ生産を支える重要な産業の一つであると言えます。
ばれいしょでん粉は、原料の主産地を中心として道内各地に点在する農協系と商系を合わせて17のでん粉工場で生産されています。原料には、でん粉専用として生産されたもののほか、生食用や加工用の規格外品も利用されており、平成17年産は、1,058千トンの原料から231千トンのばれいしょでん粉が生産されています。
ばれいしょでん粉の用途を平成17でん粉年度における用途別販売数量からみると、最も多いのが、関税割当制度の下で運用されているコーンスターチ用輸入とうもろこしなどとの抱合せ販売による糖化製品向けであり、販売数量全体の62%に当たる145千トンが販売されています。このほかに、片栗粉や水産練製品、麺類向けなど、抱合せ販売に比べて高い価格で取引されている、いわゆる固有用途向けは、販売数量全体の38%に当たる88千トンが販売されています(図5)。
農業は本道の主要産業であり、その関連産業も含め、本道経済において重要な役割を担っています。そのうち、食料品製造業、特にばれいしょでん粉製造業は、乳製品や砂糖などの製造業とともに、地域経済を支える基幹産業となっています。平成17年の産業別製造品出荷額等において、食料品製造業が全体に占める割合を全国と本道で比較すると、全国では8%であるのに対し、本道では33%を占めています(図6)。
ばれいしょの国内需要は、平成14年をピークに近年は減少傾向にありますが、その中で、加工食品用については、食の外部化、簡便化によりコロッケなどの冷凍品やサラダ、惣菜用などで需要が堅調に推移しています。しかし、この分野では輸入品がシェアの6割程度を占める状況にあることから、今後は加工食品向けに北海道産ばれいしょの生産拡大を図ることが、販路拡大の上で重要な課題となっています。
ばれいしょでん粉については、平成19年産から品目横断的経営安定対策の導入によりコーンスターチ用輸入とうもろこしなどとの抱合せ措置が廃止されたことから、新たな制度の下での販路確保が重要な課題となっています。このため、これまで食品としての製造が認められていなかった化工でん粉について、早期に国内製造が認められることによる販路の拡大が期待されているところです。
本道のばれいしょおよびばれいしょでん粉をめぐる情勢は、品目横断的経営安定対策の導入や、でん粉に係る抱合せ制度の廃止による新たな価格調整制度の運用など、現在、大きな転換期を迎えていますが、本道農業と地域経済を支える重要な品目としてばれいしょおよびばれいしょでん粉を安定的に生産するためには、今後ますます実需者ニーズに対応した生産対策が求められます。