ホーム > でん粉 > 生産現場の優良事例など > さつまいも生育概況について
最終更新日:2010年3月6日
でん粉情報 |
[2010年02月]
【生産地から】鹿児島県農業開発総合センター 大隅支場
これまで鹿児島県における平成21年産原料用さつまいもについて、8月時点でのマルチ栽培、10月時点での無マルチ栽培の生育概況を報告した。今回は11月に実施した最終調査結果を踏まえ、でん粉原料さつまいもで最も栽培面積の大きいシロユタカと今後、栽培面積の拡大が期待されるダイチノユメの生育状況などについて報告する。
4、7月の平均気温は平年並みであったが、5、6、8、9月は平年を若干上回った。一方、10、11月は平年より若干低かった(図1)。
図1 平均気温(平成21年4〜11月)
|
4月から9月は降水量が少なく、日照時間が長かった。特に、5月上、中旬、9月中旬は降雨がほとんどなく、土壌は乾燥状態であった。10、11月は降水量が平年より多かった(図2、3)。
図2 降水量(平成21年4〜11月)
|
図3 日照時間(平成21年4〜11月)
|
マルチ栽培は植付直後に降雨があり、活着が良好であった。一方、無マルチ栽培では植付後7日間降雨がなく、欠株の発生があり、シロユタカは補植を行った。
その後は天候に恵まれ、いずれの作型も生育は良好であった。また、10、11月の降水量が多かったことから、地上部の枯死する速度が平年と比較すると遅かった。(図4、5、6、7)。
図4 シロユタカ(マルチ)つる重推移
|
図5 シロユタカ(無マルチ)つる重推移
|
図6 ダイチノユメ(マルチ)つる重推移
|
図7 ダイチノユメ(無マルチ)つる重推移
|
上いも(1個50グラム以上のいも)個数は、アール当たりマルチ1,689個(平年比122%)、無マルチ1,307個(平年比98%)であり、マルチは平年より多く、無マルチは平年より少なかった。
また、上いも収量はアール当たりマルチは655キログラム(以下、kg)(平年比130%)、無マルチ440kg(同108%)であり、マルチ、無マルチともに平年より多収であった(図8、9)。
図8 シロユタカ(マルチ)上いも収量、個数
|
図9 シロユタカ(無マルチ)上いも収量、個数
|
なお、でん粉歩留はマルチ24.9%(平年比96%)、無マルチ23.7%(平年比99%)であり、ともに平年より低かった(図10、11)。
図10 シロユタカ(マルチ)でん粉歩留
|
図11 シロユタカ(無マルチ)でん粉歩留
|
上いも個数は、アール当たりマルチ1,738個(平年比111%)、無マルチ1,460個(平年比95%)であり、マルチは平年より多く、無マルチは平年より少なかった。
また、上いも収量はアール当たりマルチは608kg(平年比119%)、無マルチ454kg(同127%)であり、マルチ、無マルチともに平年より多収であった(図12、13)。
図12 ダイチノユメ(マルチ)上いも収量、個数
|
図13 ダイチノユメ(無マルチ)上いも収量、個数
|
なお、でん粉歩留はマルチ25.7%(平年比103%)、無マルチ25.8%(平年比102%)であり、ともに平年よりやや高かった (図14、15)。
図14 ダイチノユメ(マルチ)でん粉歩留
|
図15 ダイチノユメ(無マルチ)でん粉歩留
|
活着が良好であったマルチ栽培での上いも個数は、シロユタカ、ダイチノユメともに多かった。一方、無マルチ栽培では、植付前後の乾燥の影響などでいずれの品種も平年より少なかった。
上いも収量はシロユタカ、ダイチノユメともにいずれの作型も平年を上回った。マルチ栽培は植付直後から生育が順調に推移し、地上部の生育も旺盛であり、生育後半の天候にも恵まれ多収であった。一方、無マルチ栽培は植付時には乾燥などの影響でシロユタカでは欠株が発生するなど上いも個数は少なくなった。しかし、生育初期の気温が高く茎葉が十分確保されていたことと生育後半の天候に恵まれたことなどから上いも収量は平年より多くなった。
でん粉歩留はダイチノユメではマルチ、無マルチともに平年より高かった。しかし、シロユタカはいずれの作型でも平年より低かった。このように品種により異なった傾向を示した要因については、品種特性なのかを含め、今後、その他の品種における傾向も踏まえて検討する必要がある。