フィードロットからの出荷ペースは鈍化
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2018年9月21日に公表した「Cattle on Feed」によると、8月のフィードロット導入頭数は、前年同月比7.4%増の207万頭となった。干ばつにより飼養環境が悪かった南部などで肥育もと牛の早期出荷が進んだことに加え、飼料穀物が安定していることなどを背景に、フィードロットの導入意欲も高かったことなどが要因として考えられる。
一方、同月のフィードロットからの出荷頭数は、同0.2%増の198万3000頭と、出荷のペースに鈍化が見られた。重量の軽い肥育もと牛の導入増加により、肥育期間が長期化していること、肥育牛価格の下落幅縮小により、一部の食肉パッカーが買い控えたこと、今後の肥育牛価格の上昇を期待したフィードロットが売り控えたことなどが要因として挙げられている。同月の出荷ペースの鈍化は、第4四半期(10〜12月)の出荷頭数の増加に転嫁されると予想されている。
この結果、9月1日時点のフィードロット飼養頭数は、同5.9%増の1112万5000頭となり、同月としては過去最高を記録した(表1)。
生産量は増加傾向で推移するも、価格は底堅い
USDA/NASSが2018年9月20日に公表した「Livestock Slaughter」によると、8月の牛と畜頭数は、前年同月比1.2%増の297万8000頭となった。同月の1頭当たり平均枝肉重量は、同0.1%減の371キログラムとなり、この結果、牛肉生産量は、同1.2%増の110万2000トンとなった。
また、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2018年8月の牛肉卸売価格は、前年同月比5.9%高の100ポンド当たり209.15米ドル(1キログラム当たり530円:1米ドル=115円)となり、国内外からの堅調な需要を背景に4カ月ぶりに前年を上回った(図1)。
同月の牛肉小売価格(平均)は、同1.9%高の同608.20米ドル(同1542円)と4カ月ぶりに前年を上回った。レイバー・デー(9月第1月曜日の祝日)に向けて国内需要が高まる中、特に今年は、景気が良好なことなどから、Tボーンやリブステーキなど高価格部位への需要が高かったとされている。
国外からの需要は堅調
USDA/ERSによると、2018年7月の牛肉輸出量は、前年同月比16.8%増の12万7000トンとなった(表2)。
輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは、前年同月比12.9%増の3万8000トンとなった。韓国向けは、堅調な需要を背景に前年を大幅に上回って推移しており、同月は同61.1%増の2万9000トンとなった。韓国市場で競合する豪州産牛肉に関税緊急措置が適用されることから、米国の牛肉産業からは、韓国向け輸出のさらなる増加を期待する声もある。また、韓国や台湾をはじめとするアジア向けの増加要因として、レストランのほかコンビニエンスストアでの牛肉の取扱いの拡大などが挙げられている。
一方、中国・香港向けは、中国が7月から米国産牛肉に対して報復関税を課したことから、同27.4%減の7000トンと大幅に減少した。
(調査情報部 渡辺 陽介)