成牛と畜頭数、干ばつによる淘汰の継続により増加
豪州統計局(ABS)によると、2018年7月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州で発生している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、71万2100頭(前年同月比12.5%増)とかなり増加した。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は33万400頭(同1.7%減)と減少した一方、雌牛は38万1700頭(同28.5%増)と大幅に増加しており、牛群縮小のために繁殖雌牛を中心とした淘汰が継続している。
1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛の増加に伴い285.7キログラム(同4.3%減)と減少し、と畜頭数の増加分を一定程度相殺したことで、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、20万3474トン(同7.6%増)となった(図2)。
肉牛取引価格、降雨を受けて上昇
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、QLD州およびNSW州における干ばつにより取引頭数が増加したことから、降雨を受けて一時的に上昇した3月を除き、1月以降下落傾向で推移している(図3)。同価格は、4月に、2015年6月以来、34カ月ぶりに1キログラム当たり500豪セント(420円:1豪ドル=84円)を下回ったところだが、その後も天候の回復はみられず、8月20日には、同445豪セント(374円)まで下落した。しかし、8月末にQLD州およびNSW州でまとまった降雨があったことから、牧草肥育業者を中心に導入意欲が増加したことにより上昇に転じ、9月18日には同503豪セント(423円)と、再び同500豪セントを上回った。その後はわずかに下落したことで、9月末時点では490豪セント(412円)となった。
しかし、QLD州およびNSW州の降雨も、いまだ牧草の生育が改善するほどの十分なものではなく、肉牛取引価格の今後の動向は、天候次第となっている。
2019年牛飼養頭数、干ばつによる淘汰の増加により前回から下方修正
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2018年9月18日、「Agricultural Commodities」の中で、2018/19年度(7月〜翌6月)の牛肉需給見通しを発表した。同見通しは、四半期に一度公表される。
これによると、2018/19年度の牛と畜頭数は、干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、834万5000頭(前年度比5.5%増)と増加を見込んでいる(表3)。
と畜頭数の増加に伴い、2019年6月末時点の牛飼養頭数は、前回(2018年6月)の増加見通しから一転し、2570万頭(前年比0.4%減)と下方修正された。
牛肉生産量は、雌牛のと畜割合の増加および干ばつによる早期出荷に伴い1頭当たり枝肉重量の低下が見込まれることから、230万3000トン(同2.9%増)とわずかな増加を見込んでいる。
牛肉輸出量は、生産量の増加により116万5000トン(同3.7%増)と見込んでいる。輸出先国別に見ると、米国向けは、同国における雌牛と畜の増加により赤身率の高い牛肉の需要が減少することで、わずかに減少するとしている。一方、日本、中国および韓国向けはいずれも増加を見込んでおり、中でも中国は旺盛な輸入牛肉需要が継続するため、大幅に増加するとしている。
肉牛取引価格は、干ばつによる雌牛淘汰の増加や早期出荷により取引頭数が増加することから、前回から下方修正され、かなり下落すると見込んでいる。
(調査情報部 大塚 健太郎)