引き続き、鶏肉と加塩鶏肉の輸出が好調
2018年1〜8月の鶏肉調製品、冷凍鶏肉、冷凍加塩鶏肉の輸出量はいずれも増加した(表10)。
鶏肉調製品は、前年同期比で4.8%増の36万1000トンであった。冷凍鶏肉は、同28.4%増の18万トンとなり、日本向けも引き続き好調である。
冷凍加塩鶏肉は、同54.2%増の6万9000トンと大幅に増加した。この品目は、関税割当
(注1)により低関税で輸出できるEU向けが99%以上を占める。EUでは、2017年3月に発覚したブラジルの食鳥処理場や加工場での不正事件以降、同国からの輸入量が減少し、タイ産に代替需要が向かったものと考えられる(図8)。一方で、現地報道によると、タイでも加工場に問題が見つかっている。2018年1〜2月に、国内のEU向け加工施設がEUによる査察を受け、複数の工場で基準を満たしていないとの指摘を受けたとされており、これらの工場からは一時的に輸出ができなくなったといわれている。
注1:枠内税率は15.4%で、割当数量は年間9万2610トン。枠外税率は1キログラム当たり1.3ユーロ(174円、1ユーロ=133.6円)である。
輸出単価をみると、冷凍加塩鶏肉は輸出量増大に伴って上昇している(表11)。他方、冷凍鶏肉については、輸出量が増大したにもかかわらず低下しているが、これは国内価格の低下によるものと考えられる。
国内価格は低下
生体の農家庭先価格をみると、2017年の夏から低下傾向で推移している(図9)。2018年1月から8月の平均価格は1キログラム当たり34.9バーツ(125円:1バーツ=3.58円)で、前年同期の同37.5バーツ(134円)よりも7.1%低い。現地専門家によると、2017年の夏以降に価格が低下したのは、2017年に供給が増えすぎたことに加え、2018年2月にいくつかのEU向け加塩鶏肉製造工場において問題が見つかり、一時的にEUへの輸出が止められたことが影響しているとみられている。
2017年に生体価格が低下するまで、ひなの価格が上昇しつづけていたことも、同時期における農家が積極的に増産に取り組んでいたことを示唆している。
生産量は20カ月連続で増加
2018年1〜8月の生産量は、前年同期比2.0%増の102万トンだった。月別にみると、20か月連続で前年同月を上回っている(図10)。農家庭先価格が2017年秋以降低下傾向で損益分岐点とされる1キログラム当たり35バーツを下回っていることを考えると、近々生産量拡大にブレーキがかかる可能性がある。
トウモロコシ価格は高水準
飼料用トウモロコシの卸売価格は本年6月まで前年同月比で2〜3割高い水準で推移していたが、その後低下し、9月には同8.1%高となっている(図11)。
なお、現地専門家によると、飼料用小麦を輸入する際に課される国産トウモロコシの購入義務
(注2)に関する規程が再度変更されて元通りとされたといわれる。また、政府による来年度のトウモロコシ生産奨励補助金
(注3)の対象面積が70万ライ(11.2万ヘクタール)から150万ライ(24万ヘクタール)に拡大される見通しという。
注2:米国農務省によると、タイでは安価な代替品から国内のトウモロコシ農家を保護することを目的として、2017年1月以降、輸入する飼料用小麦の3倍の量の国産トウモロコシを政府が指定する価格で購入しなければならない。現地専門家によると、2018年夏に一時的に3倍から2倍に下げられたが、その後すぐに3倍に戻された。
注3:現地専門家によると、同補助金は乾期作のトウモロコシを対象に、1ライ(16アール)当たり2000バーツ(7160円)が支払われる。タイのトウモロコシ主産地であるペチュブーン県では、雨期初期作(4〜5月播種)、雨期末期作(8月播種)、乾期作(12〜1月播種)の3期作が行われる。単収は1ライ当たり乾期作が1300キログラム、雨期作が840キログラム程度といわれる。
(調査情報部 三原 亙)