7月の生乳出荷量は1.4%増
欧州委員会によると、2018年7月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.4%増の1359万760トンとなり、17カ月連続の増加となった(図15)。
7月の出荷量を加盟国別にみると、2017年にリン酸塩排出削減のために乳牛の
淘汰を行ったオランダ(同1.2%減)と干ばつの影響が最も大きい国の一つであるアイルランド(同2.5%減)は減少したものの、主要生産国はいずれも増加となった(表13)。
乳脂肪と乳たんぱく質含有率は低下
7月の生乳出荷量は前年同月を上回ったものの、出荷された生乳の乳脂肪および乳たんぱく質含有率は、前年同月を下回っている(図16)。欧州委員会によると、7月の乳脂肪含有率は前年同月を0.03ポイント下回る3.88%、乳たんぱく質含有率は同0.02ポイント下回る3.29%となった。乳脂肪含有率は3カ月連続で、乳たんぱく質含有率は4カ月連続で前年水準を下回って推移している。
これは、この夏の熱波により搾乳牛がストレスを受けたことと、干ばつの影響で牧草の生育が芳しくなかったことによるものと考えられる。現地報道によれば、牧草の生育状況が悪いことから、アイルランドや英国において、冬期の飼料として確保していたサイレージを給与する酪農家もみられるとのことである。
欧州委員会は、干ばつが農作物の生産と動物福祉の面で大きな影響を与え、特に飼料不足を招く懸念があることから、今年後半の畜産農家の所得に影響を及ぼす可能性があるとしている。一方、EU加盟各国の乳業関係者で構成される欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)は、干ばつによる飼料不足と飼料価格上昇の影響が表れるのは、2018年の第4四半期または2019年の第1四半期になるのではないかとみている。
乳価は5カ月連続で前年同月を下回る
欧州委員会によると、8月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比5.0%安の100キログラム当たり33.50ユーロ(1キログラム当たり44.89円:1ユーロ=134円)となった(図17)。生乳出荷量が増加傾向で推移する中、乳価は、2018年4月に18カ月ぶりに前年同月比で下落に転じ、5カ月連続で前年を下回った。
(調査情報部 前田 絵梨)