天候回復による生産量増により、輸出量も回復
アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、2018年1〜8月の主要乳製品輸出量は、前年同期比9.2%増とかなりの程度増加した(表14)。これは、生乳生産量が、トウモロコシの需給ひっ迫による生産コストの上昇や、酪農主産地の洪水により大幅に減少した前年から大きく回復したことが要因とされている。アルゼンチンでは、昨年11月以降、主要酪農・穀物生産地域を中心に干ばつに見舞われたことで、生乳生産量の回復についても懸念されていた。しかしながら、政府系の第三者機関である乳業チェーン観測所(OCLA)によると、(1)干ばつの間も、昨年の洪水時と比較して良好な生産を続けていたこと、(2)4月第2週目以降、良好な降雨を記録し、牧草状態が回復したことにより、生乳生産の回復がさらに進んだとしている。
輸出量を品目別に見ると、主力の全粉乳が前年同期比61.2%増と大幅に増加した。中でも、アルジェリア向けは、同502.1%増の3万6989トンと大きく輸出量を伸ばした。一方、2016年以降、政情不安により輸出量を大きく減らしているベネズエラ向けは、2016年1〜8月比で96.1%減の504トンと、回復の見込みが見えない状況となっている。
2018年の生産量は回復見込みも、経済状況に懸念
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は、アルゼンチンの2018年の生乳生産量について、前年比3.8%増の1079万5000トンと予測している(図18)。2015年以前の数量には及ばないものの、天候の回復を背景に、一定程度の生産増が見込まれている。一方、OCLAは、現在のアルゼンチンの経済状況に懸念を示しており、ペソ安による生産コストの上昇などを不安視している。
(調査情報部 佐藤 宏樹)