主産地のビクトリア州も前年同月比4.9%減
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2018年7月の生乳生産量は、63万700キロリットル(64万9600トン相当、前年同月比4.2%減)と、2カ月連続で前年同月を下回った(図19)。豪州東部を中心とする干ばつによる牧草の生育状況の悪化に伴い、酪農家が牛群を縮小する動きが強まり、と畜に仕向ける雌牛頭数が増大したことから、生産量の減少幅が拡大した。
7月の生乳生産量を地域別に見ると、酪農主産地のビクトリア州は、41万3800キロリットル(42万6200トン相当、同4.9%減)と、これまで前年同月を上回っていたが、一転して減少となった。最も干ばつの影響を受けているクイーンズランド州は、3万1800キロリットル(3万2800トン相当、同10.2%減)と2桁減となった。
7月の乳製品輸出量、粉乳類は減少もバター類およびチーズは増加
DAが発表した2018年7月の主要乳製品4品目の輸出量を見ると、生乳生産減などの影響から脱脂粉乳および全粉乳は減少となった(表15、図20)。特に、脱脂粉乳については、前年同月の輸出量が高水準であったことから、同37.8%減と大幅な減少となった。一方、バター類については、バターオイルの輸出増が全体を押し上げて、同9.1%増となった。また、チーズは、輸出先国からの引き合いが好調であったことから、同15.7%増となった。
7月の輸出量を輸出先別に見ると、脱脂粉乳は、主要な輸出先である中国、インドネシアおよびマレーシア向けが軒並み減少した。全粉乳は、中国向けが増加したものの、香港およびマレーシア向けが減少した。バター類は、タイ、中国および韓国向けが増加したものの、香港およびシンガポール向けが減少した。チーズは、中国およびマレーシア向けが減少したものの、最大の輸出先である日本向けが大幅に増加した。
なお、輸出金額については、脱脂粉乳が大幅に減少したものの、バター類およびチーズが増加した結果、全体ではほぼ前年同月並みとなった。
2018/19年度の生乳生産量は、わずかな増加の見通し
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月18日、四半期ごとに公表している「Agricultural Commodities」の中で、2018/19年度(7月〜翌6月)の生乳および乳製品需給に関する見通しを公表した(表16)。
これによると、2018/19年度の乳牛飼養頭数は、干ばつ被害の状況に左右されるものの、前年度比0.3%増の152万5000頭と見込んでいる。1頭当たりの乳量は、前年度並みの6116リットルと見込んだ結果、生乳生産量は、同0.4%増の932万7200キロリットルと予測している。
主要乳製品の生産量については、脱脂粉乳、全粉乳およびチーズは減少するものの、バター類はわずかに増加すると予測している。
また、乳製品の輸出金額については、引き続き、海外からの堅調な乳製品需要を反映し、同1.3%増の34億6850万豪ドル(2914億円;1豪ドル=84円)と予測している。
干ばつでコストアップに直面する豪州酪農
DAによれば、現在、豪州の干ばつ被害は、東部地区のニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州およびビクトリア州の一部に及んでおり、これらの地域で、豪州酪農家の約40%に相当する2000戸が経営を行っている。
これらの酪農家では牧草の生育悪化により、餌が不足するため牧草や飼料穀物を購入せざるを得ない状況となっているが、干ばつにより最近の牧草価格は今年1月時点よりも2倍、飼料穀物価格は50%上昇しているとされ、酪農家の大きなコスト増の要因となっている。加えて、水の確保のためにこれまで以上に経費を要し、これらのコスト増が酪農経営の圧迫要因となっている。なお、DAによれば、今回の干ばつによる酪農経営への影響は、少なくとも今後12カ月〜18カ月間は継続すると見込まれている。
(調査情報部 石橋 隆)