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特集:TPP11協定および日EU・EPAにおける代表的な畜産物の輸出見通し 畜産の情報 2018年12月号

TPP11協定を見据えた宮崎県における畜産の生産基盤強化に向けて

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宮崎県 農政水産部 畜産新生推進局長 大久津 浩    大久津氏写真

1 はじめに

 平成22年に本県で発生した口蹄疫では、29万7808頭もの家畜の尊い命が犠牲となり、畜産業のみならず、地域経済や県民生活に甚大な影響を及ぼしました。
 口蹄疫の終息後、22年に「口蹄疫からの再生・復興」を策定し、県政の最重要課題に位置付け、畜産経営再開への支援をはじめ、産地構造・産業構造の転換、さらには地域活性化など、官民一体となって「オール宮崎」で取り組んできました。その後、25年に策定した「宮崎県畜産新生プラン」、そして現在は第3ステージとなる28年に策定した「宮崎県畜産新生推進プラン」に基づき、「防疫体制の強化」を基本に「生産力の向上」、「人材力の強化」、「販売力の強化」の三つの視点を重点施策に掲げ、本県畜産業の成長産業化に向けた取り組みを推し進めています。
 今日に至るまで、全国から寄せられた多くのご支援に対し、また、生産者の皆さまをはじめ県民の皆さまの多大なるご尽力に対し、深く感謝を申し上げます。

2 口蹄疫からの再生・復興に向けた具体的成果

 生産者の皆さまをはじめ、関係機関・団体が一丸となって、口蹄疫からの再生・復興に取り組んできた結果、28年の畜産の農業産出額は2206億円と過去最高額を記録しました。
 また、肉用牛においては、昨年の「第11回全国和牛能力共進会」で3大会連続となる内閣総理大臣賞受賞を果たすとともに、訪日旅行客の拡大を背景に和牛への関心が高く、多様な部位の需要が見込まれる台湾へ向け、全国に先駆けた「宮崎牛」の輸出や、「宮崎牛」のブランドを守るための地理的表示(GI)保護制の登録などに取り組んできました(写真1)。また、30年3月には第90回アカデミー賞授賞式後のパーティーで宮崎牛が特定産地の和牛として初めて採用(写真2)されるとともに、株式会社ミヤチク、JA宮崎経済連、県の三位一体のプロモーション活動を行った結果、29年度の牛肉輸出量は394トンと過去最高となりました(図1)。

 
写真1  昨年12 月に県内で初のGI 登録を受けた宮崎牛 
 
写真2  アカデミー賞授賞式後のパーティーのメニューに採用された「宮崎牛」


図1 宮崎県産牛肉の輸出量の推移


 さらに、生産基盤の面では、農林水産省の「畜産クラスター事業」などの支援を受け、生産者個々の規模拡大に加え、連携・分業化による産地ごとの生産力向上に向けた繁殖センターやキャトルステーションなどの地域拠点施設の整備も県下に広がり、繁殖雌牛が27年を境に増加に転じ、30年は対前年比2600頭増加(全国1位の増加頭数)の8万3200頭となり、32年のプラン目標である8万頭を前倒しで達成することができました。
 また、担い手については、口蹄疫で発生地域に豚がいなくなったピンチをチャンスと捉え、特定疾病のフリー地域づくりに貢献された有限会社香川畜産が天皇杯を受賞されるとともに、本年6月には同代表の香川雅彦氏が本県から初めて一般社団法人日本養豚協会の会長に就任するなど、畜産をけん引するリーダーが県内各地域で活躍しています(写真3)。
 流通・販売においては、農林水産省の「農畜産物輸出拡大施設整備事業」(注)の支援を受け、県内で生産された牛・豚・鶏を県内で処理・加工して付加価値を付けるための最新鋭の設備などを備えた2カ所の輸出拠点施設の整備も着々と進んでいます(写真4)。
 また、畜産への依存度が高い産地構造を転換するため、JAグループが、当時西日本最大級の冷凍野菜加工工場を新設し、経営中止した畜産農家の飼料畑などを加工業務用野菜の栽培に利用集積した結果、国産冷凍ホウレンソウの7割を占める産地が形成されております。

注:「 攻めの農林水産業」を実現するため国産農畜産物の輸出拡大に必要な産地基幹施設の整備を支援する事業

 
写真3  (有)香川畜産と日本養豚協会の会長



写真4 (株)ミヤチク都農工場

3 新たな国際化への対応

 わが国の畜産は、TPP11協定などにより、新たな国際競争の時代を迎えようとしております。
 このような中、今年の夏、県内各地域の実情に応じて肉用牛繁殖雌牛の増頭目標を定めた「人・牛プラン」の取組状況や今後の推進に向け、地域キャラバンを行いました。その中で、山間地域では肉用牛繁殖は重要な品目ではあるが、平地に比べて人口減少が著しく、条件不利なため、柔軟な発想に基づく経営資源の継承や労働力の確保に向けた対策を求める意見や、コントラクターによる粗飼料生産の分業化を進めようとしてもオペレーター不足により受託面積を広げることが困難、さらには、若い担い手が積極的に畜産に参入できるように、情報通信技術(ICT)やロボット技術を取り入れた生産現場の働き方改革を推し進め、省力・高収益型の畜産を展開することが重要といった意見が寄せられ、このような課題に対しても引き続き取り組んでいきたいと考えております。
 農業の国際化の進展に加え、担い手の減少や、社会保障費などの増大に伴う県における畜産関係予算が縮小する中、今後とも、宮崎県がわが国の食料供給基地としての責務を果たしていくためには、漫然とした施策の前例踏襲では限界があります。生産者を含めた畜産関係者のみならず、幅広い産業・分野が垣根を超えた有機的な連携構築により、新しいアイデアを持ち寄り、次世代を担う畜産業に挑戦し続けることが重要だと思っております。
 これからも、畜産新生推進プラン(図2)に掲げている「忘れない!そして前へ!」を合い言葉に、生産者の皆さまをはじめ、国、関係団体、市町村などとの連携を図りながら、中国で発生したアフリカ豚コレラなどの新たな脅威に備えた水際防疫、地域防疫、農場防疫による防疫体制のさらなる強化を図るとともに、国際化の大きな流れの中で、畜産関係者が将来に夢と希望を持てるよう、本県畜産業の競争力強化に向けて全力で取り組んでいきます。

 
図2 宮崎県畜産新生推進プラン概要
 
(プロフィール)
昭和58年 宮崎県庁入庁
平成26年 地域農業推進課長
   28年 農業経営支援課長
   29年 南那珂農林振興局長
   30年から現職
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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