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国内の需給動向【牛乳・乳製品】   畜産の情報 2018年12月号

平成30年度上半期の生乳生産量、前年同期並み

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 平成30年9月の生乳生産量は、56万624トン(前年同月比3.5%減)と12カ月ぶりに前年同月を下回った(図8)。
 これは北海道において、9月6日に発生した北海道胆振東部地震に伴う道内全域での停電による酪農現場での約2万トンの生乳廃棄、搾乳遅れによる乳房炎発症に伴う乳量減少などにより、30万228トン(同4.8%減)と13カ月ぶりに減少に転じたことによるものである。都府県は離農などによる減産傾向が続いており、26万396トン(同1.8%減)と31カ月連続で前年同月を下回った。
 用途別処理量を見ると、牛乳等向けは、地震の影響および複数の大型台風の影響に伴う北海道から都府県への移出量の減少などを背景に、33万9389トン(同2.9%減)と5カ月ぶりに前年同月を下回り、乳製品向けも21万7098トン(同4.3%減)と4カ月ぶりに前年同月を下回った。このうち、脱脂粉乳・バター等向けは前年同月比0.6%減となった(農林水産省「牛乳乳製品統計」、農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。

 
図8 生乳生産量の推移

 

生乳生産量、北海道のシェアが拡大

 平成30年度上半期(4〜9月)の生乳生産量は、367万6431トン(前年同期比0.3%増)となった。このうち、北海道は200万1202トン(同1.7%増)と増加した一方で、都府県は167万5229トン(同1.4%減)と減少した。
 北海道の増加要因として、畜産クラスター事業などの生産基盤強化対策が功を奏し、搾乳牛飼養頭数が増加していることなどが挙げられる。一方、都府県については、離農の進行などで搾乳牛飼養頭数が減少しており、地域別に見ると、メガファームが全体をけん引している中国地方および増頭対策が進んでいる九州地方を除き、前年同期を下回った。
 過去10年間の北海道と都府県の生乳生産量のシェアの推移を見ると、20年度は49:51で都府県が過半を占めていたが、22年度に北海道が逆転し、30年度上半期は54:46と北海道のシェアが拡大している(図9)。

 
図9 北海道と都府県の生乳生産量とシェアの推移


牛乳等向け処理量、カフェラテなど業務用向けが好調

 上半期の用途別生乳処理量は、牛乳等向けが205万623トン(前年同期比0.3%増)、乳製品向けが160万1110トン(同0.1%増)となった。
 牛乳等向けについては、加工乳・成分調整牛乳は生産量が減少しているものの、健康機能を伝えるテレビ番組の放映により、ゴールデンウィーク明け以降、牛乳消費が堅調なほか、カフェラテタイプのペットボトルコーヒーなどの原料に使用される業務用向けの増加などにより前年並みを維持した。
 乳製品向けについては、高級アイスクリームやコンビニエンスストアでの好調な和洋菓子販売などを受けて、クリーム需要が堅調なことから、液状乳製品向けが66万2254トン(同1.1%増)と増加したほか、脱脂粉乳・バター等向けが72万5304トン(同0.8%増)と増加した。一方、チーズ向けは20万8227トン(同4.0%減)と減少した(表)。
 
表 生乳処理量の用途別数量の推移

下半期の生乳生産量、1.2%減の見通し

 一般社団法人Jミルクが平成30年10月23日に公表した「平成30年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと今後の課題について」によると、平成30年度下半期(30年10月〜翌年3月)の生乳生産量は、前年同期をわずかに下回る358万トン(前年同期比1.2%減)の見通しとなった。
 このうち、北海道については、震災の影響に伴い、大幅な減少が懸念されたものの、9月下旬以降、前年同期を上回る水準まで回復してきていることから、193万8000トン(同0.8%減)と見込んでいる。なお、今後は、不作となった本年度産の牧草・デントコーンへの自給飼料の切り替えによる生乳生産に及ぼす影響について注視が必要としている。
 一方、都府県については、7月の記録的な猛暑による生産量への影響が懸念されたものの、8月以降は暑さが和らいだこともあり、164万2000トン(同1.8%減)と見込んでいる。
 この結果、30年度累計では725万7000トン(前年度比0.5%減)の見通しとなった。


農林水産省、30年度の輸入枠変更せず

 同日、農林水産省は、今後の乳製品需給を見通した結果、平成30年1月に設定した30年度の国家貿易による輸入枠の数量(バター1万3000トン、脱脂粉乳2万7000トン)を変更しないとの方針を発表した。
 年末需要に向けたバターは既に手当て済みのほか、脱脂粉乳は十分な在庫が確保されており、引き続き、需給に対応した必要量が定期的に売り渡される予定であることから、需給は安定的に推移するものと見込まれている。
 
(畜産需給部 二又 志保)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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