成牛と畜頭数、干ばつにより引き続き増加
豪州統計局(ABS)によると、2018年8月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州で発生している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、74万2700頭(前年同月比9.7%増)と、5カ月連続で前年同月を上回った(図4)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は35万4100頭(同4.1%減)と4カ月連続で前年同月を下回った一方、雌牛は38万8600頭(同26.2%増)と9カ月連続で前年同月を上回った。と畜頭数全体に占める雌牛の割合は、52.3%と5カ月連続で50%を上回っており、牛群縮小のために繁殖雌牛を中心とした淘汰が継続している。
1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛の増加に伴い286.2キログラム(同3.3%減)と減少し、と畜頭数の増加分を一定程度相殺したことで、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、21万2531トン(同6.1%増)となった。
牛肉輸出量、アジア向けを中心に増加
豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2018年9月の牛肉輸出量は、9万1668トン(前年同月比4.3%増)と、9カ月連続で前年同月を上回った(表4)。
2018年1〜9月までの累計では、84万479トン(前年同期比11.6%増)と、干ばつによる牛肉生産量の増加および輸出需要増によりかなり増加した。
主要輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは、好調な牛肉消費により輸入牛肉需要が増加していることから、23万4969トン(同7.0%増)とかなり増加した。3番目の輸出先国である韓国向けも、12万5227トン(同14.6%増)とかなり増加した。しかし、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、同国向けの牛肉輸出量は、10月10日時点で、豪州と韓国間の自由貿易協定に基づくセーフガードの発動水準に迫っており、近々セーフガードが発動するとしている。4番目の中国向けは、11万6163トン(同55.3%増)と最も増加しており、韓国向けに迫る勢いとなっている。一方、2番目の米国向けは、同国における牛肉生産量の増加に伴う需要の減少や、輸出単価の低下に伴う収益性の低下などにより減少した。
生体牛輸出、中国向けが大幅増
ABSによると、2018年1〜8月の生体牛輸出頭数は、69万4579頭(前年同期比25.2%増)と、生体牛輸出の中心となっているノーザンテリトリー(NTという)やQLD州北部における牛飼養頭数の増加や、それに伴う生体牛輸出価格の下落による輸出先国からの需要増などにより大幅に増加した(表5)。
主要輸出先別にみると、最大の輸出先国であるインドネシア向けは、36万9172頭(同9.4%増)とかなり増加した。しかし、同国政府が実施する、肥育もと牛5頭の輸入に対し、繁殖用雌牛1頭の輸入を輸入業者に義務付ける政策や、同国がインドからの水牛肉の輸入を増加させていることなどにより、60万頭以上輸出していた2、3年前と比べるといまだ少ない水準にある。豪州政府は、8月、インドネシアと包括的経済連携協定(IA-CEPA)の早期締結に合意し、年内の調印を目指していると発表した。この協定が締結された場合、生体牛輸出に関して無税の関税枠が、初年度は50万5000頭に設定され、2年目以降は5%ずつ拡大していくことから、同国向けの輸出拡大が期待されている。
2番目のベトナム向けは、インドネシア向けと同様、豪州の供給力の増加などに伴い大幅に増加した。
中国向けは、7万5160頭(同66.6%増)と大幅に増加しており、特に、肉用牛が増加した。2015年以前は、同国向けは乳用牛が中心であったが、2015年に、豪州と中国間で肥育もと牛およびと畜場直行牛に関する家畜衛生条件が合意され、それ以降肉用牛の輸出頭数が年々増加している。
(調査情報部 大塚 健太郎)