生産量は前年同期比8.9%増
アルゼンチン工業生産・労働省によると、2018年1〜9月の牛と畜頭数は、前年同期比7.5%増の997万6455頭、牛肉生産量は同8.9%増の227万2000トン(枝肉重量ベース)となった(図6)。輸出需要の高まりから増頭意欲が増していることに加え、年初に発生した干ばつの影響で、経産牛の
淘汰が進んだことも要因の1つとされている。
輸出は引き続き増加
アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、2018年1〜9月の牛肉輸出量は、前年同期比68.3%増の24万9503トン(製品重量ベース)となった(表8)。アルゼンチンでは、2015年12月の政権交代以降、農畜産物の輸出規制が撤廃されるなど、輸出環境が向上している。国別に見ると、ほぼ全ての国向けで輸出量が増加したが、特に中国向けとロシア向けの増加が顕著となった。
中国は、旺盛な需要に加え、米国や豪州と比較して価格が安いことから、南米からの輸入を増やしている。また、前述の通り干ばつの影響で経産牛の淘汰が進んだことで、加工用の安価な牛肉を求める中国の需要を満たす結果となった。ロシアは、2017年12月以降、それまで最大の輸入相手国だったブラジルからの輸入を、同国からの畜産物にロシア側が禁止している成長促進剤が検出されたことを受け、2018年10月末まで停止していたことから、その代替需要として大幅に輸出量が増加した。
輸出量は2019年も大幅な増加の見通し
米国農務省(USDA)によると、2019年のアルゼンチンの牛肉生産量は前年比1.7%増の300万トン(枝肉重量ベース)と見込まれる(表9)。生産量の約8〜9割が仕向けられる国内消費は、景気低迷による鶏肉や豚肉など他畜種への消費のシフトにより同1.0%減とわずかに減少が見込まれるものの、輸出向けは、中国、ロシアなどの旺盛な需要を見込んで同15.0%増と予測されている。
期待が広がる日本向け輸出
2018年6月27日、アルゼンチン国内の口蹄疫ワクチン非接種清浄地域である北パタゴニアAおよびB地域ならびに南パタゴニア地域(パタゴニア地域)から日本向けの牛肉輸出が解禁となった。これを受け、既に買い付けが始まっており、7月には最初の航空便が、10月には船便が日本に到着し、本格的な対日輸出が始まろうとしている。現地関係者によると、パタゴニア地域の輸出パッカーは、まずは月15トン、年間200トン程度の輸出を目指しているという。
(調査情報部 佐藤 宏樹)