アフリカ豚コレラが続発
本年8月3日に遼寧省瀋陽市で初めて確認されて以来、国内各地でアフリカ豚コレラの発生が続いている。11月8日時点で、15省(市、自治区)の69カ所で発生が確認されている(図7)。
中国農業農村部は8月31日の通知
(注1)において、アフリカ豚コレラが発生した省では、(1)各行政区域
(注2)から外部に生体豚や豚肉を搬出することなどを禁じ、(2)省内すべての生体豚取引市場を閉鎖し、(3)発生県でのと畜を禁止する旨の指示を出している。
その後、9月11日の通知
(注3)で、アフリカ豚コレラが発生した省に隣接する省では、(1)省外への生体豚や豚肉の持ち出しを禁止するとともに、(2)省内のすべての生体豚取引市場を閉鎖するとしている。
注1 : 農業農村部の生体豚及びその製品の調達への監督管理を着実に強化する通知(農明字(2018)第29号)
注2 : ここでは省、市、県を指す。中国では一般に市の下位に県がある。A省B市C県で発生が確認された場合、C県の生体豚は県外に搬出できない。一方、B市D県の生体豚をB市E県に搬出することは禁止していない。
注3 : 農業農村部の生体豚及びその製品の越境調達の監督管理を強化する通知(農明字(2018)第33号)
豚肉小売価格はわずかに上昇し、子豚価格と生体価格は下落
アフリカ豚コレラが発生した15の省(市、自治区)およびこれらに隣接する省(市、自治区)から生体豚や豚肉の持ち出しが禁止
(注4)されているが、10月までの価格に大幅な変動はみられない。
中国国内の豚生体出荷価格と子豚価格、豚肉の小売価格は、いずれも5月に底を打ち、9月までは上昇傾向で推移した。10月の価格を見ると、小売価格がわずかに上昇した一方で、子豚価格と生体価格はわずかに下落した(図8)。
ほとんどの省(市、自治区)において域外への生体豚や豚肉の移動が禁じられているため、消費地では豚肉が不足して小売価格が上昇し、生産地では供給が過剰となり生体価格が下落したと考えられる。
また、多くの生産者が自らの農場で豚コレラが発生した場合の損失を減らすために子豚の導入を見送っているため、子豚価格が下がっているとみられる。
注4 : どの省(市、自治区)が該当するか中国政府は明らかにしていないが、少しでも隣接しているものを含めると、新疆ウイグル自治区と青海省、海南省を除くすべての省(市、自治区)が対象となる。
米国産豚肉の中国向け輸出は引き続き低水準
中国の生体豚出荷価格は、2017年1月以降低下傾向で推移し、2018年5月までに4割低下している。一方、米国の豚肉価格は、夏場に上昇しているものの、大きくは変わっていないため、2018年前半は価格優位性が低下し、米国からの輸出量が減少したと考えられる(図9)。
2018年後半は、米国産豚肉に2018年4月と6月にそれぞれ25%の追加関税が課されたため、輸出量は極めて低い水準となっている。
大規模と畜場のと畜頭数が引き続き増加
中国農業農村部によると、大規模と畜場
(注5)におけると畜頭数は、2017年3月以降、前年同月を上回って推移している(表10)。現地専門家によると、2018年1月以降の生体豚出荷価格の急落によって農家が売り急ぎ、と畜頭数が増えたとみられている。加えて、2015年後半以降に大手企業グループが積極的に新農場を建設したことも影響していると考えられる。
注5 : 年間2万頭以上の豚を処理すると畜場。中国農業農村部「中国畜牧獣医年鑑」によると2016年時点で全国に2907カ所あり、と畜頭数は全体の3割を占める。
(調査情報部 三原 亙)