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海外の需給動向【牛乳・乳製品/豪州】  畜産の情報 2018年12月号

干ばつ被害の拡大で生乳生産量は3カ月連続の減少

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8月の生乳生産量は前年同月比3.6%減

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2018年8月の生乳生産量は、71万7100キロリットル(73万8600トン相当、前年同月比3.6%減)と、3カ月連続で前年同月を下回った。2018/19年度(7月〜翌6月)の8月までの累計でも、135万5200キロリットル(139万5900トン相当、前年同期比3.4%減)と前年同期をやや下回った(図16)。

 
図16 生乳生産量の推移 


 豪州東部を中心とする干ばつによる牧草の生育状況の悪化に伴い、酪農家が牛群を縮小する動きが強まり、と畜に仕向ける雌牛頭数が増大したことから、生乳生産量の減少率は拡大傾向にある。
 8月の生乳生産量を地域別に見ると、酪農主産地のビクトリア州は、47万1400キロリットル(48万5500トン相当、同5.3%減)と、干ばつ被害による減産が鮮明になってきた。このほか、東部地区のニューサウスウェールズ州およびクイーンズランド州は、それぞれ9万6300キロリットル(9万9200トン相当、同5.1%減)、3万5500キロリットル(3万6600トン相当、同4.7%減)と干ばつの影響を受け、軒並み減少となった。


8月の乳製品輸出量、全粉乳は減少もバター類は大幅増

 DAが発表した2018年8月の主要乳製品4品目の輸出量を見ると、全粉乳は、生乳生産減や輸出需要の低下などの影響から前年同月比48.2%減と大幅な減少となった。一方、バター類については、東南アジア向けバターオイルの輸出増が全体を押し上げて、同91.8%増と大幅増となった。また、チーズは、輸出先国からの引き合いが好調であったことから同7.4%増、脱脂粉乳は前年同月の輸出量が低水準であったことから同9.6%増となった(表15、図17)。
 なお、輸出金額については、全粉乳が大幅に減少したものの、バター類およびチーズが増加した結果、全体では同8.1%増となった。
 
表15 乳製品輸出量(8月)
 
  図17 乳製品輸出量の推移



乳製品国際価格、バターは4カ月ぶりに反発

 2018年10月16日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表16、図18)。主要4品目では、バターが前回比で値を上げたが、他の3品目については値を下げる結果となった。
 
表16 GDT乳製品価格(2018年10月16日開催)


 脱脂粉乳の価格は、前回比0.3%安のトン当たり1977米ドル(22万5000円)と、春以降、2000米ドル前後でほぼ安定的に推移している。最も値を下げた時期に当たる前年同月と比べると10.0%高となった。
 全粉乳は、輸入国からの引き合いが弱まったことに伴い、前回比0.9%安の同2729米ドル(31万1000円)と、7月に3000米ドルを割り込み、さらにジリジリと値を下げ、前年同月比では9.5%安となった。
 バターは、春以降、主要生産国の供給増などにより急速に値を下げてきたが、前回比2.4%高の同4114米ドル(46万9000円)と、4カ月ぶりに反発した。ただし、高値であった前年同月と比べると、28.3%安と3割近く値を下げている。
 チーズも、今年5月には4000米ドルを上回ったものの、それ以降、ジリジリと値を下げており、前回比1.8%安、前年比17.1%安の同3404米ドル(38万8000円)となった。
 このように、全般的に弱含みの取引結果となったのは、ニュージーランドの生乳生産の回復が顕著になったことに加え、その他の主要国の生乳生産がおおむね順調であることを反映したものとされている。
 
図18 GDTの乳製品価格の推移


飲用牛乳の消費量は順調に増加

 DAによれば、豪州における2017/18年度の飲用牛乳の消費量は、前年度比1.6%増の254万8600キロリットルと順調に増加した。牛乳の種類別では、普通牛乳(Full Cream Milk)が同2.5%増の140万3900キロリットル、ロングライフ牛乳(UHTMilk)が同18.1%増の30万4100キロリットルと増加したのに対し、低脂肪牛乳(Reduced Fat Milk)および無脂肪牛乳(No Fat Milk)が同5.6%減の59万8800キロリットル、フレーバー牛乳(Fresh Flavoured Milk)が同2.2%減の24万1800キロリットルと減少し、低脂肪、無脂肪、フレーバー牛乳から普通牛乳およびロングライフ牛乳へ消費のシフトが見られた。DAによれば、消費が順調な理由として、豪州の人口が増加していることに加え、コーヒーに牛乳を混ぜて飲む習慣が一層浸透したことなどを挙げている。
 また、10年前の2007/08年と比較すると、飲用牛乳の消費量は約16%増加したが、中でも普通牛乳が低脂肪および無脂肪牛乳からのシフトにより約25%増と高い伸びとなった。DAによればその理由として、10年前の段階では、消費者は乳脂肪に対して太るなどのネガティブなイメージを持っていたことから低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を支持していたが、最近は、乳脂肪に対する消費者の理解が進み、普通牛乳の方がナチュラルな製品と理解されるようになったことを挙げている。(図19)

 
図19 豪州における飲用牛乳の消費量の推移
 
(調査情報部 石橋 隆)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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