ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > EU産チーズの輸出見通し
〜地理的表示(GI)で保護された伝統的なチーズ〜
EUは、生乳生産量で全世界の約2割を占める大産地である(図1)。チーズについてみると、年間の生産量は1000万トンを超え、第2位の米国の2倍近くを生産している(図2)。生産されたチーズの大部分はEU域内で消費され、生産量の1割弱が輸出に仕向けられている。輸出に仕向けられているのは、生産量の一部とはいえ、年間の輸出量は80万トンを超え、第2位の米国の2倍以上を輸出している(図3)。
なお、日本は、EUのチーズ輸出先国第2位で輸出量の約1割がわが国に仕向けられている。一方、わが国のチーズ輸入先を見ると、EUが3割以上を占め、最大の輸入先となっている(図4)。
わが国とEUは、2013年に交渉が始まった日EU経済連携協定(日EU・EPA)について2017年12月に妥結し、2018年7月に署名式を行った。
日EU・EPAの合意内容によれば、チーズに関しては、EU産のハード系チーズは関税が段階的に引き下げられ16年目に撤廃となり、ソフト系チーズには関税割当枠が設定され、枠内税率は段階的に引き下げられ16年目に無税となる。また、その他に、日EU間で地理的表示(GI:Geographical Indication)について相互に保護されることになる。
EUの最大の関心事項は、EU産農畜産物の、1億人を超える日本市場へのアクセス改善であった。その中でも、パルミジャーノ・レッジャーノやゴルゴンゾーラなどのGIで保護される伝統的なチーズを多く有するEUの乳業界にとって、日EU・EPAは非常に関心の高いものであった。
本稿では、EUのチーズ生産と輸出の現状とともに、EU側の関心の高かったGI制度で保護されたチーズのうち、産品数が多く、また産品ごとの生産量の多いイタリア産について、その制度や生産・輸出状況、日EU・EPAの合意内容を踏まえた今後の輸出に対する生産者の見解などを、2018年9月に実施した現地調査を踏まえて報告する。なお、本稿の為替レートは、1ユーロ=130円(2018年10月末時点)とした。