未経産牛のと畜頭数は増加
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2018年11月21日に公表した「Livestock Slaughter」によると、10月のと畜頭数は、前年同月比5.6%増の295万8000頭となった。このうち、去勢牛は同3.6%増の147万4000頭、未経産牛は同5.8%増の85万6000頭、経産牛(肉用・乳用の合計)は同10.5%増の57万7000頭といずれも増加した。と畜頭数に占める未経産牛の割合は、繁殖農家による自家保留の減少により増加傾向にあり、同月は28.9%となった(図1)。
同月の牛肉生産量は、と畜頭数が増加したほか、平均枝肉重量が前年同月並みであったことから、同5.5%増の110万2000トンとなった。
食肉パッカーの収益性は良好
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2018年11月の肥育牛価格は、フィードロット飼養頭数の増加などから、前年同月比6.9%安の100ポンド当たり114.00米ドル(1キログラム当たり287円:1米ドル=114円)(速報値)となった(図2)。
また、2018年11月の牛肉卸売価格は、前年同月比2.8%高の100ポンド当たり215.00米ドル(1キログラム当たり540円)(速報値)となった。牛肉卸売価格は、国内外からの堅調な需要を受けて、同年8月以降前年を上回って推移している(図3)。牛肉卸売価格が比較的高値である一方、肥育牛価格が前年を下回っていることから、食肉パッカーの収益性は良好とみられている。また、一部の食肉パッカーでは、現在の需給バランスを維持し、収益性を確保するために肥育牛の受入れを調整する動きがあるとされている。
なお、同年9月の牛肉輸出量は、前年同月比6.6%増の11万8000トンとかなり増加した。中でも、需要が堅調な韓国向けが同25.0%増の2万3000トンと大幅な増加となった。
プライム級の割合が増加
米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2018年11月16日までの一週間に格付された枝肉のうちプライム級が占める割合は、9.6%となり、前年同期を2.5ポイント上回った(図4)。この割合は近年増加傾向にあり、その要因としては、遺伝的改良がされる中、2014年以降の牛群再構築の際に雌牛の更新が進んだことなどがあるとされている。また、現地業界誌では、去勢牛に比べて脂肪交雑(サシ)が入りやすいとされる未経産牛のと畜割合が増加していることも要因に挙げられている。
最上級の肉質等級であるプライム級の増加は、牛肉価格の上昇にも多少影響していると考えられている一方、供給量の増加によりプライム級全体の価格が押し下げられ、上から2番目の肉質等級であるチョイス級との値差が縮小している。
(調査情報部 渡辺 陽介)