と畜頭数増が豚肉の増産をけん引
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2018年11月21日に公表した「Livestock Slaughter」によると、10月のと畜頭数は、前年同月比5.9%増の1164万3000頭となった。と畜頭数は、飼養頭数の増加に加え、工場の新設による処理能力の向上などにより、増加傾向で推移している(図8)。同月の平均枝肉重量は、前年並みの95.7キログラムとなり、豚肉生産量は111万1000トンと同5.8%増加した。
2018年第4四半期(10〜12月)の豚肉生産量についてUSDAは、と畜頭数が引き続き増加するとの予測から、前年同期比3.5%増の319万1000トンと見込んでいる。また、2019年についても前年を上回って推移し、年間では前年比5.3%増の1257万1000トンと過去最高が見込まれている。
メキシコ向け輸出量がかなり減少
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2018年9月の豚肉輸出量は、前年同月比2.6%増の19万6000トンとなった(表6)。
輸出先別に見ると、最大の輸出先であるメキシコは、同年6月から米国産豚肉に対して報復関税を課したことから、同10.3%減の5万9000トンとかなり減少した。メキシコ国内の豚肉需要は堅調とみられており、カナダやスペイン、デンマークなどからの輸入量は増加している。また、中国も報復関税を課していることから、中国・香港向けは、同33.8%減の1万トンと大幅に減少した。
一方、国内需要が堅調な韓国向けが同36.0%増の1万7000トンと大幅に増加したほか、コロンビアやホンジュラスなどの中南米諸国やフィリピン向けなどが増加し、メキシコおよび中国・香港向けの減少を相殺した。日本向けは、同0.9%増の4万2000トンとなったが、同年12月30日のTPP11協定の発効を控え、同協定が適用されない米国の食肉関係者は、競争力の低下を懸念している。
もも肉価格は大幅下落
USDA/ERSによると、2018年11月の肥育豚価格は、前年同月比6.9%安の100ポンド当たり43.25米ドル(1キログラム当たり109円:1米ドル=114円)(速報値)となった。
また、同月の豚肉卸売価格は、増産に伴う需給緩和などにより、前年同月比14.2%安の100ポンド当たり70.00米ドル(1キログラム当たり176円)(速報値)となった。部位別に見ると、もも肉価格は、同28.2%安の同48.00米ドル(同121円)と大幅に下落した(図9)。下落要因として、増産に加えて、もも肉の主要輸出先であるメキシコ向けの輸出量減少による影響もあったと考えられる。一方、ばら肉は、同3.7%高の同140.00米ドル(同352円)となった。
肥育豚価格よりも豚肉卸売価格が大きく下落していることから、食肉パッカーの収益性は、低調に推移しているとみられている。
(調査情報部 渡辺 陽介)