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海外の需給動向【牛乳・乳製品/豪州】  畜産の情報 2019年1月号

干ばつ被害の拡大で今年度の生乳生産見通しを大幅に下方修正

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9月の生乳生産量は前年同月比3.3%減

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2018年9月の生乳生産量は、87万5300キロリットル(90万1600トン相当、前年同月比3.3%減)と、4カ月連続で前年同月を下回った。2018/19年度(7月〜翌6月)の9月までの3カ月間の累計でも、223万1800キロリットル(229万8800トン相当、前年同期比3.3%減)と前年同期をやや下回った(図17)。
  豪州東部を中心とする干ばつによる牧草の生育状況の悪化に伴い、酪農家が牛群を縮小する動きが強まり、と畜に仕向ける雌牛頭数が増大したことから、生乳生産量は引き続き減少している。なお、これは、適度な降雨に恵まれ、順調な生乳生産を記録している隣国ニュージーランドとは対照的な生産状況となっている。
 
図17 生乳生産量の推移


州別の生乳生産量は明暗が分かれる

 9月の生乳生産量を地域別に見ると、酪農主産地のビクトリア州は、58万3900キロリットル(60万1400トン相当、同4.0%減)と、全体を上回る減少率となった。また、干ばつ被害の深刻な東部地区のニューサウスウェールズ州およびクイーンズランド州は、それぞれ9万4600キロリットル(9万7400トン相当、同10.2%減)、3万2700キロリットル(3万3700トン相当、同10.5%減)と軒並み二桁減となった。一方、タスマニア州および南オーストラリア州は、干ばつ被害を受けることなく、それぞれ8万3600キロリットル(8万6100トン相当、同7.1%増)、4万6800キロリットル(4万8200トン相当、同7.7%増)と順調に推移しており、州によって明暗が分かれる生産状況となった。


9月の乳製品輸出量、全粉乳およびバター類は大幅減

 DAが発表した2018年9月の主要乳製品4品目の輸出量を見ると、全粉乳およびバター類については、生乳生産減などの影響から、それぞれ前年同月比27.0%減、同28.4%減と大幅な減少となった。一方、チーズについては、引き続き海外需要が順調であることから、同24.1%増と高い伸びとなった。また、安値で安定的に推移している脱脂粉乳については、同3.9%増と2カ月連続で増加した(表12、図18)。
 
表12 乳製品輸出量


図18 乳製品輸出量の推移
 

2018/19年度の生乳生産見通しを大幅に下方修正

 DAが10月に公表した「Dairy Situation and Outlook」によれば、2018/19年度の生乳生産量の見通しは、前年度比5〜7%減の860万〜880万キロリットルに落ち込むとしている。DAが前回の6月時点で公表した見通しでは、同0〜2%増の930万〜950万キロリットルとしていたが、大幅な下方修正を余儀なくされた。このような下方修正の背景としては、干ばつによる牧草の不足と飼料穀物価格の上昇および水確保のためのコストアップなど厳しい経営環境から、酪農家が搾乳牛を淘汰しているためとしている。仮に、豪州の生乳生産量が900万キロリットルを下回った場合、1995/96年以来、23年ぶりの低い水準となる。
 
(調査情報部 石橋 隆)
このページに掲載されている情報の発信元
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