9月の生乳生産量は、前年同月比6.0%増
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2018年9月の生乳生産量は、268万2000トン(前年同月比6.0%増)と6カ月連続で前年同月を上回った(図19)。2018/19年度(6月〜翌5月)の9月までの4カ月間の累計でも452万5000トン(前年同期比5.8%増)と好調に推移している。これは、春季に適度な降雨に恵まれ、牧草の生育状況が良好なためである。なお、これは、干ばつ被害で生産量を減らしている隣国豪州とは対照的な生産状況となっている。
9月の乳製品輸出量、中国向けの不振で軒並み減少
ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2018年9月の乳製品主要4品目の輸出量は、以下の通りとなった(表13、図20)。
9月の輸出量については、これまで輸出拡大をけん引してきた中国向け輸出が不振であったことから軒並み減少した。脱脂粉乳および全粉乳については、前年同月比31.4%減および10.4%減となったが、それぞれ3割の輸出シェアを占める中国向けが前年同月比で3割強減少したことが大きく影響した。バター類については、同1.8%増とわずかに増加したが、2割強の輸出シェアを占める中国向けは16.6%減となった。また、チーズについても、同15.0%減となったが、15.5%のシェアを占める中国向けが2割強減少した。
なお、輸出金額については、輸出量の減少に加え、乳製品の国際価格が弱含みで推移したことから、全体では前年同月比13.5%減となった。
乳製品国際価格、バターは4000米ドル割れで2年前の水準へ
2018年11月20日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表14、図21)。主要4品目では、チーズが前回並みの取引価格となったが、他の3品目は続落し、特にバターは10%以上、値を下げる結果となった。
脱脂粉乳の価格は、前回比1.6%安のトン当たり1965米ドル(22万4000円)と、本年4月以降、2000米ドル前後でほぼ安定的に推移している。最も値を下げた時期に当たる前年同月と比べると15.5%高となった。
全粉乳は、輸入国からの引き合いが弱まったことに伴い、前回比2.1%安の同2599米ドル(29万6000円)と、7月に3000ドルを割り込み、さらにジリジリと値を下げ、前年同月比では6.4%安となった。
バターは、5月以降、主要生産国の供給増などにより急速に値を下げてきたが、前回比10.1%安の同3637米ドル(41万5000円)と、25カ月ぶりに4000米ドルを割り込み、前年同月比では29.3%安と3割近く値を下げている。
チーズも、5月には4000米ドルを上回ったものの、それ以降、ジリジリと値を下げており、前回比0.1%高、前年同月比15.1%安の同3252米ドル(37万1000円)となった。
このように、全般的に弱含みの取引結果となったのは、生乳生産のピークを迎えたニュージーランド(NZ)の状況が好調であることに加え、豪州を除く主要国の生産状況もおおむね順調であることを反映したものとされている。
NZ政府、17年ぶりに酪農産業再編法のレビューを表明
NZ政府は、2001年に成立した酪農産業再編法(Dairy Industry Restructuring Act 2001)のレビューに取り組むことを表明した。NZでは、2001年に酪農産業の再編が行われ、それまでの乳製品の一元輸出機関を解体した上で、当時の二大酪農協を合併し、輸出販売機能を取り込んだ巨大酪農協(乳業メーカー)であるフォンテラが誕生した。フォンテラ誕生と同時に、生乳および乳製品市場での競争促進を目的とした同法が成立した。同法では、フォンテラの寡占による弊害を回避するため、新規乳業メーカーの参入機会の付与とフォンテラが集乳した生乳の一定量を他社の求めに応じて供給することなどを義務付けており、見直しが求められていた。
NZ政府は、レビューに係る検討資料を公表した上で、パブリックミーティングを全国13カ所(2018年12月13日現在)で開催し、2019年2月まで国民から意見を募った上で、同年中に同法を改正したいとしている。
(調査情報部 石橋 隆)