生乳価格は前年を上回る水準まで回復
2018年の生乳価格(主要10省・自治区)は、1月以降前年を下回り7月まで下降傾向で推移してきたが、8月から上昇しはじめ、10月以降は昨年を上回った(図22)。現地専門家によると、飼料価格の上昇や環境規制による農場閉鎖によって供給が減り、需給がタイトになったことが原因と言われている。
生乳生産量の統計数値が下方修正
中国国家統計局は2018年9月に出版した『中国統計年鑑2018』において、第3次農業センサスの結果に基づいて、主要な農業関係の統計数値を遡って修正した(表15)。生乳生産量は増加傾向とされていたものの、2016年が538万トン引き下げられ、2006年以降、3000万トン前後で横ばいで推移していたことが分かった。
乳用牛飼養頭数については、中国統計年鑑に掲載されていないため、修正後のデータは未公表だが、生乳生産量の修正幅を基に推計すると、2016年は213万頭減り、1212万頭となった。
2018年4月以降、中国政府が貿易に関する統計の詳細を公表していないことから、牛乳乳製品の輸入量について分析することが困難となった。このため、今回は、改めて中国の牛乳乳製品の需給状況について、概要を紹介する。
全ての牛乳乳製品輸入量が増加傾向
国内の乳業メーカー各社は、2008年に発覚したメラミン混入事件以降、特に育児用粉乳や高級ヨーグルト製品の原料として、国産品を敬遠し輸入品の使用を増やしてきた(表16)。輸入量は、今後も消費者の輸入ブランドへの信頼性の高さなどによって増加基調で推移すると予測される。
乳製品のうち全粉乳(育児用粉乳、還元乳やヨーグルト、アイスクリーム、焼き菓子などの原料として使われる)の需給を見ると、2013年から2014年にかけての大量輸入で在庫が積み上がっていたため、2015年から2016年の輸入量は低水準にあったが、2017年には過剰在庫が解消されたと言われている(表17)。主な輸入相手国はニュージーランドであり、同国はFTAによる関税削減の恩恵を受けて9割のシェアを占めている。
脱脂粉乳は、全粉乳に比べて消費量が少なく、生産量、輸入量ともに近年は横ばいで推移している(表18)。また、国内生産よりも輸入量が多いことが特徴的である。
中国では、飲用乳の消費量は、2015年まで増加していたが、2016年以降は減少している(表19)。国内生産量も同様に減少傾向であるが、輸入数量は一貫して増加している。ロングライフ(LL)牛乳が広く普及しているため、ドイツなど遠方の国からも輸入される。
ユーロモニターインターナショナル社によると、小売販売数量は、フレーバーミルクが減少傾向であるのに対し、牛乳とヨーグルト、チーズは増加しており、特に、ヨーグルトとチーズは過去5年間で倍増している(表20)。
牛乳については、販売量の8割弱を占めるロングライフ(LL)が2017年に減少に転じた。一方で、フレッシュミルク(要冷蔵の牛乳)は一貫して増加している。なお、ロングライフの中でも比較的賞味期限の短い製品の販売量が増えているといわれる。
フレーバーミルクについては、2014年以降急速に販売量が減少しており、消費者の健康志向が影響していると考えられている。
ヨーグルトは、販売量が急速に伸びている。中国では飲むタイプのヨーグルトが主流で、最近は、特に常温保存できる商品が地方都市や農村部に急速に普及し、ヨーグルト販売の拡大をけん引していると言われている。
チーズについては、プロセスチーズが8割強を占め、外食で提供されるピザやハンバーガーをきっかけに消費が広がっている。ナチュラルチーズの販売は少なく、3割強をクセのないモッツァレラチーズが占めている。
(調査情報部 三原 亙)