つなぎ飼い式牛舎における発情時の行動を明らかにする目的で、北里大学獣医学部附属フィールドサイエンスセンター十和田農場内つなぎ飼い式牛舎で飼育されている肉用種繁殖雌牛を用いて、発情時の行動を検証した。
4頭の供試牛を用いて、発情日を含む前後2日間の計5日間の行動をビデオ撮影し、解析に供した。1分ごとに牛の行動を立位(採食も含む)と横臥に分けて測定、記録した。得られたデータを基に1日ごとの総起立時間、最長起立継続時間、起居回数を測定した。
また、加速度センサーが搭載されたネックベルトを供試牛に装着し、試験期間中の加速度を測定し、解析に供した。
なお、発情観察は8時30分と17時に外部兆候の観察および直腸検査によって行い、発情を発見した日を発情日とした。
発情日前後の総起立時間・最長起立継続時間を図1−1、2に示した。総起立時間、最長起立継続時間ともに非発情日と比較して発情日に有意に増加した(P < 0.05)。
発情日前後の起居回数・加速度を図1−3、4に示した。起居回数は、非発情日と比較して発情日に有意に減少した(P < 0.05)。加速度は、有意差は認められなかったが、非発情日と比較して発情日に増加する傾向がみられた。
総起立時間、最長起立継続時間ともに、発情日に有意に増加した(P < 0.05)。牛は、非発情日に対して、発情日には立位時間の延長が認められていることから(Oshi et al.,2005)、つなぎ飼い式牛舎においても発情時には立位時間が延長することが明らかとなった。また、発情1日後においても立位時間の延長が認められた。牛の発情持続時間は約10〜27時間と報告されている(加茂前,2008)。このことから、発情日の翌日も発情が継続していたと考えられた。
起居回数は発情日に有意に減少した(P < 0.05)。このことから、起居回数は発情による立位時間の延長により、減少したものと考えられた。
加速度は、有意差は認められなかったが、非発情日と比較して発情日に増加する傾向が認められた。一般的に発情牛は多動になると報告されている(Oshi et al.,2005)。このことから、発情日において、立位時間中に足踏み、くび振りなどの動作が増えた結果、加速度が上昇したものと考えられた。
以上のことから、つなぎ飼い式牛舎では、起居動作を発情兆候の指標として活用できる可能性が示唆された。