当社グループは、経済産業省が取り組む「新・ダイバーシティ経営企業100選」において平成28年度の経済産業大臣表彰を受賞しました。これは農業分野の企業では全国初となるもので、労働時間の短縮や多様な働き方の推進に向けた取り組みが評価されたものと考えています。役職員数は合計361人(平成30年12月現在、有期雇用契約も含めた人数)で、8カ所の牧場で交雑種、黒毛和牛、ホルスタインを計2万4000頭強飼養しています。
私が求める人材は、遂行能力と部下をまとめる能力の二つを有する人材です。遂行能力は「気づき」、まとめる能力は「人間性」や「コミュニケーション能力」のことです。当社では、日ごろの飼養管理に関する数値やデータをマネジメントに活用し、動物医学的な牧場運営を行っています。数値やデータは全職員が共有可能です。結果として表れた数値によって努力の成果がすぐにわかりますし、思ったようにいかなければ改善の余地があるということです。これにより、「気づき」を促します。このような人材を育てるためには、人事評価制度が適切に運用されることが重要であり、これによって職員のモチベーションを維持・向上させることができます。また、会社が掲げた目標以上のものを達成できる近道は、多様な人材を受け入れることだと考えています。多様な人材が集まることにより、イノベーションが生まれるものと確信しているのです。
その結果、職員に求める資質として挙げられるのは、仕事に対して自分で考えることができる「自立性」です。すなわち、自らの立ち位置を俯瞰(ふかん)的に見ることで、より効率的に行動し、上司への提案を行うことができることであり、そのような資質を持っている人間を私は求めていますし、日々育てているつもりです。今までの経営者はルーチン業務をただ単にこなすことを職員に求めてきたかもしれませんが、私は起業家的な目線で畜産・酪農経営を見ているため、職員には自然と私と同じような物の見方を求めてしまうのかもしれません。
職員が目標に向かっていく姿勢を鮮明にし、目標を達成する喜びを分かち合うのが仕事の醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか。苦楽をともにして一致団結させることが経営を行っていく上で大切なことだと捉えています。
私たちのような農業企業を就職先に選択し、就職後の離職率が比較的低いのは、当社の人事評価制度が正しい方向へ進んでいる証しかもしれません。職員の誰もが働きやすく、やりがいを感じながら生き生きと働くことができる職場をつくるためには、継続的な働き方改革の推進が不可欠です。当社の職員は、仕事への志がとても高く、一次産業の重要性も理解してくれています。それと同時に、企業体としての農業経営体に対して魅力を感じているのでしょう。長く働くことができる職場としてやりがいだけではなく、「持続可能な農業」としての将来性も感じてくれていて、社長として大いに期待しております。
さらに、ただ単に目標を達成するのではなく、経営感覚かつ、あくなき探究心を持っている人材も求めています。経営感覚とは、「費用対効果といったコスト意識」と言い換えられます。また、一つのことを突き詰めて考える「研究者タイプ」のような人材も求めています。
私が考える「働き方改革」は機械化・ロボット化だけを行い、労働時間を短くするというものではなく、経営者が職員に対し経営理念や将来のビジョンを掲げ、多様な人材を一つの目標に向かう道しるべを示すことに他なりません。つまり、経営者がやりたいことを明確にして、職員が目標に向かっていける環境をつくることです。当社には肉牛、乳牛の飼養ではなく、受精卵を培養するといった研究部門に携わっている職員もいます。「当社で何をしたいのか」「当社に入って何を目指すのか」「日々の仕事を行っていく上で、どのようなビジョンを描くのか」を明確にすることで、多様な人材に当社を選んでもらえるものと考えています。