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国内の需給動向【牛肉】   畜産の情報 2019年2月号

肉用子牛取引価格、全品種で高値が続く

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 平成30年11月の牛肉需給を見ると、生産量は3万4325トン(前年同月比4.1%増)と前年同月をやや上回った。品種別では、乳用種が8248トン(同4.1%減)と前年同月をやや下回ったものの、和牛が1万6828トン(同7.4%増)とかなりの程度、交雑種も酪農家での黒毛和種交配率が上昇していた時期の牛が出荷適齢期を迎えていることから8809トン(同5.4%増)とやや、いずれも前年同月を上回った。
 輸入量は、冷蔵品が9カ月連続で2万トンを超える水準となっており、11月も2万4852トン(同13.2%増)とかなり大きく、冷凍品は2万6773トン(同37.0%増)と大幅に、いずれも前年同月を上回ったことから、全体では5万1685トン(同24.4%増)となった。
 推定出回り量は、前年同月をかなりの程度上回る8万3108トン(同10.6%増)となり、推定期末在庫は前月から2486トン積み増し、12万5754トン(同7.0%増)と5カ月連続で前年同月を上回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。


肉用子牛取引頭数、交雑種で減少傾向

 肉用子牛取引価格(全国・雌雄平均)の推移を見ると、黒毛和種については、高齢化や後継者不足による繁殖農家の減少により繁殖基盤が縮小していたことから出生頭数の減少などがみられ、平成28年度までは上昇傾向で推移していた。
 黒毛和種の肉用子牛取引価格は、28年12月に過去最高値となる1頭当たり85万2287円を記録した。29年度以降は、生産基盤強化対策の実施等により繁殖基盤の回復基調がみられ、価格は落ち着いたが、引き続き高値で推移している。30年11月は同77万2172円(前年同月比2.3%高)と4カ月連続で前年同月を上回った。この要因として、11月の取引頭数が前年同月をわずかに下回ったことに加え、和牛の枝肉卸売価格が8月以降に上昇傾向となっていたことも要因の一つとして挙げられている(図1)。
 交雑種については、交雑種の肉用子牛取引価格の高騰を受けて、乳用牛への黒毛和種交配率が上昇したことで、出生頭数は増加していた。しかし、28年度以降、減少に転じたため、取引頭数も減少傾向となっている。11月は、黒毛和種同様に交雑種の枝肉卸売価格が上昇傾向となっていたことから、同44万7539円(同13.3%高)とかなり大きく上昇した(図2)。

 
図1 肉用子牛取引頭数および取引価格の推移 (黒毛和種)
 
 
図2 肉用子牛取引頭数および取引価格の推移(交雑種)


 ホルスタイン種については、酪農家の離農に加え、乳用牛への黒毛和種交配率や乳用性判別精液の普及率の上昇などを背景に、近年は出生頭数が減少傾向で推移している。取引形態は、和牛と異なり、相対取引が多く、市場出荷頭数はゆるやかに減少している。
 ホルスタイン種は、出生頭数の減少を受け、27年12月に同25万1787円まで上昇した後、弱含みで推移したものの、28年9月を底に再び上昇し、30年11月は同26万4147円(同10.3%高)と過去最高の価格となった(図3)。

 
図3 肉用子牛取引頭数および取引価格の推移(ホルスタイン種)



31年度肉用子牛の保証基準価格、実情を反映した形に

 平成30年12月13日に開催された「食料・農業・農村政策審議会畜産部会」において、畜産物価格等の算定について諮問・答申が行われ、31年度の畜産物価格等が決定した。このうち、肉用子牛の保証基準価格については、TPP協定発効に合わせ、TPP大綱において現在の経営の実情に即したものに見直すこととされており、黒毛和種で現行1頭当たり34万1000円から53万1000円に、乳用種で同14万1000円から16万1000円に、交雑種で同21万6000円から26万9000円と、それぞれ引き上げられた。また、合理化目標価格についても黒毛和種で現行1頭当たり28万4000円から42万1000円に、乳用種で同9万8000円から10万8000円に、交雑種で同15万8000円から21万2000円と、それぞれ引き上げられた(表1)。

 
表1 肉用子牛の保証基準価格および合理化目標価格
 
(畜産需給部 小林 智也)
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