9月の豚肉生産量は前年同月比減
欧州委員会によると、2018年9月の豚肉生産量(EU28カ国)は、前年同月を4.7%下回る187万5370トンとなった(図6)。と畜頭数は、2062万頭(前年同月比4.7%減)、1頭当たり枝肉重量は、91.0キログラム(前年同月同)となった。
9月の主要生産国の豚肉生産量を見ると、イタリア、オランダ、スペインでは増産となった一方、デンマーク、フランス、ドイツ、ポーランドでは減産となった。
また、同年1〜9月の豚肉生産量の合計は、1769万30トン(前年同期比2.4%増)となった。
1〜10月の豚肉輸出量は、前年同期を3.5%上回る
2018年10月の豚肉輸出量は、前年同月比16.1%増の20万9832トンとなり、4月以降7カ月連続で増加となった(表4、図7)。国別に見ると、最も増加が大きかったのは韓国向け(前年比98.8%増)、次いでフィリピン向け(同40.3%増)であった。
2018年1〜10月の豚肉(生鮮・冷蔵、冷凍)輸出量(EU28カ国)の合計は、前年同期比3.5%増の176万9490トンとなった(表4)。主な輸出先国の動向をみると、中国向けと香港向けが減少し、韓国向け、フィリピン向け、米国向け、日本向けは増加した。
2018–2030年の中期的見通し 〜輸出は拡大の見込み〜
欧州委員会は12月に、主要農畜産物の中期見通し「EU Agricultural outlook for markets and income 2018–2030」を公表した。
欧州委員会は、本見通しの中で、近年のEUの養豚・豚肉産業について、アニマルウェルフェアへの対応と、ロシアの禁輸措置と中国の豚肉需要の拡大という、生産面と貿易面に影響を受けながら、浮き沈みを繰り返した後、2018年は記録的な生産量と輸出量になったとしている(図8)。
本見通しの中で、生産については、2018年は豚価の低迷により主要な豚肉生産国で雌豚飼養頭数が微減していることから、2019年のと畜頭数は減少すると見込んでいる。なお、中期的には、環境面への配慮が必要な中、遺伝的な改良や生産効率の改善などによる生産性の向上は見込めるものの、域内需要が減退していることもあり、2030年まで年平均で0.2%減で減産傾向が続くものと予想している。
また、EU域内の需要の減退に伴い、輸出は2030年までに年平均で0.7%増で増加し、世界の豚肉貿易の約3割を占めるまで拡大すると予想している。なお、特に輸出の増加が見込まれるのは、フィリピンとベトナムとなっている。
なお、中国の豚肉輸入は、アフリカ豚コレラの影響で短期的には増加する可能性があるものの、EUからの中国向け輸出は、中国との貿易戦争の中にある米国と、アジア市場での存在感が高まっているブラジルの動向に影響を受けるものと見ている。
(調査情報部 前田 絵梨)