生乳出荷量は前年同月と同水準
欧州委員会によると、2018年10月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月と同水準の1263万6500トン(前年同月比0.2%減)となった(図11)。生乳出荷量はこれまで増加傾向で推移してきたが、8月以降は前年同月と同水準で推移している。
10月の出荷量を加盟国別にみると、アイルランド(同20.2%増)、ベルギー(同3.3%増)、ポーランド(同2.8%増)などは増加した。一方、オランダ(同5.5%減)、フランス(同3.7%減)、スペイン(同0.8%減)、イタリア(同0.6%減)などでは減少した(表9)。
同年1〜10月の生乳出荷量の合計は、1億3255万3830トン(前年同期比1.1%増)となった。
10月の生乳の乳脂肪含有率は4.16%、乳たんぱく質含有率は3.50%と、それぞれ前年同月を0.02ポイント、0.03ポイント上回った。この夏の猛暑によるストレスと干ばつの影響で牧草の生育が芳しくなかったことなどから、9月まで、乳脂肪および乳たんぱく質含有率は5〜6カ月連続で前年同月を下回る水準で推移していたが、10月は前年同月を上回る水準まで回復した。
アイルランドの生乳生産量は政府目標を上回る速度で増加見込み
アイルランドの1〜10月の生乳出荷量は、EU(28カ国合計)の増加率(前年同期比1.1%増)を1.7ポイント上回る、同2.8%増となった(表9)。2018年は同国にとって、春先の低温と夏の干ばつなどの天候不順の影響や乳製品価格の緩やかな低下などにより、酪農経営としては厳しい年ではあるものの、生乳生産は拡大している。
同国政府は、2007〜2009年の生乳生産量の平均値を基準値(50億リットル(515万トン相当))として、2020年にその50%増となる75億リットル(772万5000トン相当)とする増産目標(Food Harvest 2020)を掲げている。また、同国は、2015年3月末のEU生乳クオータ(生産割当)制度の廃止を機に、国を挙げて増産を推し進め、乳製品の輸出拡大のためのプロモーションを積極的に行うなどしている。
アイルランド農業食品開発局(Teagasc)は12月に公表した農業経済見通し(Outlook 2019 Economic Prospects for Agriculture)の中で、2018年の生乳生産量を前年比3%増と見込んでいる。
これを受け、アイルランドにとって最大の貿易相手国である英国の英国農業園芸開発公社(AHDB)は、2020年の増産目標が2年前倒しの2018年に達成される見込みであると報告した。また、このような急速な成長に伴い、硝酸塩や温室効果ガス発生の環境問題に直面することになり、環境に関する目標が設定されるのではないかとの懸念が生じているとしている。
乳価は8カ月連続で前年同月安
欧州委員会によると、11月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比4.8%安の100キログラム当たり36.00ユーロ(1キログラム当たり46.44円:1ユーロ=129円)となった(図12)。これまで生乳出荷量が増加傾向で推移していたことから、17カ月連続して前年同月高で推移してきた乳価は2018年4月以後は8カ月連続して前年同月安で推移している。
(調査情報部 前田 絵梨)