10月の生乳生産量は前年同月比5.7%減
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2018年10月の生乳生産量は、99万1000キロリットル(102万700トン相当、前年同月比5.7%減)と、5カ月連続で前年同月を下回り、月を追うごとに減少幅が拡大している。2018/19年度(7月〜翌6月)の10月までの4カ月間の累計でも、322万5100キロリットル(332万1900トン相当、前年同期比4.0%減)と前年同期を下回った(図13)。
豪州では、10月が牧草の生育期に当たることから1年間の中で生乳生産のピークの月となるが、今年は前年同月よりも6万キロリットルも減少した。
これは、豪州東部を中心とする干ばつにより、牧草不足と飼料穀物価格の上昇および水確保のためのコストアップなど厳しい経営環境から、酪農家が乳牛を淘(とう)汰する動きが強まったためである。
主産地ビクトリア州は豪州全体を上回る減少率
10月の生乳生産量を地域別に見ると、酪農主産地のビクトリア州は65万3400キロリットル(67万3000トン相当、同7.1%減)と、豪州全体を上回る減少率となった。また、最も干ばつ被害の深刻なニューサウスウェールズ州およびクイーンズランド州は、それぞれ9万7800キロリットル(10万700トン相当、同11.0%減)、3万3300キロリットル(3万4300トン相当、同11.5%減)と軒並み二桁減となった。一方、タスマニア州は、干ばつ被害を受けることなく、11万7900キロリットル(12万1400トン相当、同5.2%増)とおおむね順調に推移しており、州によって状況は異なっている。
10月の乳製品輸出量、全粉乳は前年同月比で半減
DAが発表した2018年10月の主要乳製品4品目の輸出量を見ると、全粉乳は生乳生産減などの影響から前年同月比53.9%減と半減となった(表10、図14)。また、チーズも、前年同月が高水準にあったことから同11.8%減と二桁減となった。一方、脱脂粉乳およびバター類は、それぞれ同8.1%増および同6.8%増となった。
2018年7〜10月の4カ月間の累計を見ると、豪州の生産動向および海外需給動向を反映し、脱脂粉乳および全粉乳が減少する一方、バター類およびチーズが増加した。特に、全粉乳は、前年同期比35.6%減と大幅に減少している。
今年度の生乳生産量は、最近20年間で最低の水準に
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月10日、四半期ごとに公表している「Agricultural Commodities」の中で、2018/19年度(7月〜翌6月)の生乳および乳製品需給に関する見通しを公表した(表11)。
これによると、今年度の乳牛飼養頭数は、深刻な干ばつによる飼料不足と水確保のためのコストアップにより、酪農家が乳牛を淘汰せざるを得ないことから、前年度比5.2%減の148万頭に減少すると見込んでいる。
このため、生乳生産量は、1頭当たりの乳量がわずかに増加するものの、同4.1%減の891万キロリットルと予測している。これは、最近20年間の生乳生産量としては最低の水準となる。
この結果、乳製品生産量は軒並み減少し、バター類が同28.8%減の6万6000トンと大幅に減少するほか、脱脂粉乳が同11.0%減の17万トン、全粉乳が同12.7%減の7万2000トン、チーズが同1.2%減の37万4000トンと見込まれている。
このような状況から、乳製品の輸出金額は同2.4%減の33億4000万豪ドル(2772億円:1豪ドル=83円)と予測している。
主要乳製品の国際価格は下げ止まり
2018年12月18日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表12、図15)。主要4品目では、前回開催(12月4日)時より値を上げており、5月以降、低下傾向で推移してきた主要乳製品の国際価格は、下げ止まりの様相を呈した。
脱脂粉乳の価格は、前回比3.7%高の1トン当たり2042米ドル(22万9000円)と、4月以降、2000米ドル前後でほぼ安定的に推移している。最も値を下げた時期に当たる前年同月と比べると21.9%高となった。
全粉乳は、輸入国からの引き合いが弱まったことから値を下げてきたが、前回比0.3%高の同2674米ドル(29万9000円)と、わずかではあるが7カ月ぶりに値を上げた。ただし、前年同月と比べると2.9%安の水準となっている。
バターは、5月以降、主要生産国の供給増などにより急速に値を下げてきたが、前回比4.9%高の同3928米ドル(44万円)と反発した。なお、前年同月と比べると、12.2%安の水準となっている。
チーズは、5月に4000米ドルを上回ったものの、それ以降、ジリジリと値を下げてきたが、前回比2.5%高、前年同月比3.7%安の同3263米ドル(36万5000円)となった。
(調査情報部 石橋 隆)