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海外の需給動向【牛乳乳製品/米国】  畜産の情報 2019年3月号

低乳価で推移するも、1頭当たり乳量の増加が増産をけん引

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乳価は前年同月を下回って推移

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が1月31日に公表した「Agricultural Prices」によると、全米平均生産者乳価は、11カ月連続で前年同月を下回って推移しており、11月は前年同月比6.6%安の100ポンド当たり17.0米ドル(1キログラム当たり41円:1米ドル=110円)となった(図12)。
 乳価が低調に推移する一方、アルファルファなどの飼料価格が上昇したことから、11月の酪農マージン(注)は、同16.6%減の100ポンド当たり8.66米ドル(同21円)となった。

(注) 酪農家のセーフティネットである酪農マージン保護プログラム(MPP)において、乳価と飼料価格の差額として算定される収益。

 
図12 全米平均乳価の推移
 
 

生乳生産量は微増で推移

 USDA/NASSが2018年12月20日に公表した「Livestock Slaughter」によると、11月の乳用経産牛のと畜頭数は、前年同月比10.0%増の26万8000頭となった(図13)。この要因として、酪農家の収益性が低いことに加え、草地の状態の悪化などが考えられる。

図13 乳用経産牛のと畜頭数
 
 12月19日に公表した「Milk Production」によると、経産牛飼養頭数が前年同月比0.4%減少したものの、1頭当たり乳量が同1.0%増加したことから、11月の生乳生産量は、前年同月比0.6%増の787万9000トンとわずかに前年同月を上回った。生乳生産量は、1頭当たり乳量の増加を背景に、2017年3月以降前年同月を上回って推移している(表8)。
 同月の生乳生産量を州別に見ると、生乳生産量が最も多いカリフォルニア州は同2.9%増の148万4000トン、二番目に多いウィスコンシン州は同0.1%増の110万8000トンとなった。
 
表8 生乳生産量などの推移
 

チーズ在庫は大きく積み上がるも増産

 USDA/NASSが2018年12月4日に公表した「Dairy Products」によると、チーズ生産量は、国内を中心とした堅調な需要を反映して前年同月を上回って推移しており、10月は前年同月比3.0%増の50万8000トンとなった(図14)。

図14 チーズ生産量の推移
 
 
 また、USDA/NASSが12月21日に公表した「Cold Storage」によると、チーズの在庫量は、チーズの増産を背景に2014年11月以降前年同月を上回って推移しており、11月末時点では同7.5%増の61万4000トンとなった。年末に向けた国内需要の高まりに伴い、前月比1.3%減と取り崩されたものの、同月としては過去最高となった。
USDAは、政府閉鎖の影響で生産量に関する統計を公表していないものの、1月上中旬においてもチーズの生産は堅調と報告している。


チーズの卸売価格は低調に推移

 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2018年12月のチーズの卸売価格は、前年同月比8.1%安の100ポンド当たり165.6米ドル(402円)と3カ月連続で前年同月を下回った(図15)。国内需要が堅調である一方、生産量が増加傾向で推移しており、在庫量がかなり大きく積み上がっていることが価格を押し下げている。
 USDAは、今後もチーズ在庫が高水準を維持し、卸売価格が安値で推移するとの見通しから、2019年第1四半期におけるチーズやホエイ仕向けのクラスV乳価を前回の予測値(同14.85〜15.45米ドル)から引き下げ、同13.75〜14.25米ドル(33〜35円)と見込んでいる。
 
図15 チーズの卸売価格の推移

(調査情報部 渡辺 陽介)