多くの乳製品の輸入量が増加
2018年の乳製品の輸入量は、多くの品目で増加した。特に増加割合の高い品目について、その原因を分析する。
全粉乳は、前年比10.8%増の52万1000トンだった(表15)。中国では2014年に国内生乳価格が高騰した際に、全粉乳で生乳を代替する動きが広がったため、全粉乳需要の裾野が広がったといわれる。全粉乳の輸入量の9割近くをNZが占めている。なお、NZ産の全粉乳、脱脂粉乳、無糖れん乳は、中国NZ自由貿易協定(以下、「中国NZFTA」)により、2019年から関税が撤廃されている。一方、国産の全粉乳は、価格競争力が低く生産量が減少しており、2013年の約159万トンから2017年には約121万トンとなっている。
脱脂粉乳は、前年比13.4%増の28万トンだった。中国では脱脂粉乳はほとんど生産されておらず、主にNZ(輸入シェア45%)、豪州(同12%)から輸入されている。
育児用粉乳(以下「育粉」という)は、前年比10.1%増の33万3000トンであった。中国では、2018年1月から政府に原料の配合を登録した育粉しか販売を認めない制度がスタートした。2018年12月時点の配合の登録数は1000件強と、制度開始前の2000件から半減しているものの、大手メーカーは全て登録を済ませており、育粉供給には混乱は生じていないようである。
バターは、前年比32.3%増の8万7000トンだった。中国ではバターはほとんど生産されておらず、主にNZ(9割弱)から輸入している。
ヨーグルトは、前年比3.8%減の2万7000トンであった。近年急増を続けてきた輸入量がはじめて減少に転じた。ユーロモニターインターナショナル社によると、中国でのヨーグルト販売量は、近年、年率10%を上回るペースで増加しているため、2018年も販売量は増えているとみられている。2018年に輸入量が減少したのは、製品での輸入から原料である全粉乳の輸入に切り替えが進んだ可能性がある。
生乳価格は前年並みに回復
2018年の生乳価格(主要10省・自治区)は、9月まで前年を下回って推移してきたが、10月以降は前年を上回る水準まで回復している(図25)。現地専門家によると、飼料価格の上昇や環境規制による農場閉鎖によって供給が減り、需給が引き締まったことが原因といわれている。
1月2日に全粉乳などに対してセーフガード発動
中国政府は1月2日、NZからの全粉乳など
(注1)に対し、中国NZFTAに基づく特別セーフガードを発動すると発表した。
発表によると、1月2日時点で、全粉乳などの輸入申告数量が21万5575トンとなり、2019年の発動基準数量である16万2482トンを上回ったため、1月3日に特別セーフガードを発動し、関税率は0%から10%(最恵国関税率)に引き上げられた。
全粉乳などは、中国の牛乳乳製品輸入量全体の約3割を占め、NZ産はそのうち8割のシェアを持つ。例年、1月の輸入が多く、毎年特別セーフガードが発動している。昨年は1月5日に発動している。
昨年よりも早く発動した背景として、昨年末に生乳価格が高く、輸入品の需要が高まったことが挙げられる。
発動基準数量は、発効年(2008年)の約2万4000トンから、翌年に約10万トンに、以降、毎年5%程度ずつ引き上げられている。枠内の関税率は、発効年の9.2%から毎年約0.8%ずつ削減され、2019年以降は無税である
(注2)。
注1:全粉乳(040221、040229)、脱脂粉乳(040210)、無糖れん乳(040291)。括弧内はHSコード。
2:詳細は『畜産の情報2016年9月号』P94〜P95を参照。
(調査情報部 三原 亙)