アフリカ豚コレラが続発
2018年8月3日に遼寧省瀋陽市ではじめて確認されて以来、中国各地でアフリカ豚コレラ(以下「ASF」という)の発生が続いている。2019年2月8日時点で、25省(市、自治区)で78例が確認され、1月15日までに殺処分された豚は91万6000頭に上るとされている。
中国政府はASFの封じ込めのため、発生した地域を「疫区」として封鎖している。封鎖されている地域が所属する省(以下、「発生省」とする)と発生省に隣接する省(以下「隣接省」とする)については、省をまたぐ生体豚や豚肉の輸送が禁止されている(表5)。
1月19日以降、69カ所の封鎖が解除されたが、多くの省が依然として発生省または隣接省であるため、省をまたぐ輸送が禁止されている(図9)。
中国政府の調査によると、感染源が判明している68例のうち、23例の発生が食品残渣の給与と関係していることがわかった。このため、これまで広く行われてきた食品残渣の豚への給与が厳しく取り締まられるようになっている。
生体豚価格や豚肉小売価格に大きな動きはない
多くの省で省をまたぐ生体豚や豚肉の輸送が禁止されているにもかかわらず、生体豚の出荷価格や豚肉小売価格に大きな動きはみられない(図10)。
一方、子豚価格は、2018年秋頃から下がり続けている。これは、多くの生産者が自らの農場でASFが発生した場合の損失を減らすために子豚の導入を見送っていることに加え、輸送制限によって子豚の出荷先が限られるためだとみられる。
ASFの発生により、消費者は、豚肉を敬遠し、鶏肉や卵で代替しているといわれる。鶏肉と鶏卵の価格推移をみると、ASFが発生した8月以降上昇基調で推移し、2019年1月時点で鶏肉は1キログラムあたり20.4元(337円、1元=16.5円)で、前年同月より5.6%高く、鶏卵は同11.5元(190円)で前年同月より8.7%高い(図11)。ただし、鶏肉も鶏卵も、ASFが発生する直前の時点で既に前年同月よりも価格が高水準にあったことから、ASFとの因果関係は明らかではない。
生体豚出荷価格の低下に伴って輸入量が減少
2018年の豚肉の輸入量は、前年比2%減の119万トンとなった(表6)。これは、2018年の中国の豚肉卸売価格が低かったことが影響していると考えられる。豚肉卸売価格は、2017年1月以降低下傾向で推移し、2018年の平均価格は2017年を12%下回っている。
輸入先国をみると、2018年4月と6月にそれぞれ25%の追加関税が課された米国産が前年比48%減と大幅に減った一方で、ブラジル産は前年に比べて3倍に増加している。
大規模と畜場のと畜頭数は減少に転じる
中国農業農村部によると、大規模と畜場
(注3)におけると畜頭数は、2017年3月から2018年10月まで長期にわたって前年同月を上回って推移していたが、2018年12月に減少に転じた(表7)。
ASFの発生によって多くの豚が殺処分されていることに加え、2018年8月以降、多くの肥育農家が子豚の導入を控えていることが影響していると考えられる。なお、中国の零細規模肥育経営は、一般に、2カ月齢の子豚を導入し、6カ月齢で出荷するといわれる。
注3:年間2万頭以上の豚を処理すると畜場。中国農業農村部「中国畜牧獣医年鑑」によると2016年時点で全国に2907カ所あり、と畜頭数は全体の3割を占める。
(調査情報部 三原 亙)