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話題 畜産の情報 2019年5月号

群馬県における新規就農者の傾向について〜畜産部門を中心に〜

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群馬県農政部農業構造政策課 補佐(農業者育成係長) 渡邉 悟

1 はじめに〜群馬県における新規就農者の傾向について〜畜産部門を中心に〜

1 はじめに〜群馬県における新規就農者の動向〜
 本県における平成30年度新規就農者実態調査(調査期間29年8月2日〜30年8月1日)によると、45歳未満の新規就農者数は215人で前年度より19人増加し、3年ぶりに200人を超えた。経営部門では、園芸(野菜、果樹、花き)が最も多い125人(58.1%)、次いで畜産(酪農、肉牛、養豚、養鶏)が53人(24.7%)で、米麦、本県特産のこんにゃくが続く。
 就農形態をみると、自営就農者のうち農家子弟が89人、新規参入が22人、農業法人などへ就職するいわゆる雇用就農者が104人となっており、雇用就農者数については過去最高となっている。また、女性(自営就農+雇用就農)はここ数年40人前後で推移してきたが、30年度は53人となった(表、図1)。
 


 

 図2は、新規就農者(45歳未満)の部門別の農家子弟、新規参入、雇用就農の比率について、過去3年間の動向を表したものである。園芸では農家子弟の比率が高い一方で、米麦や畜産では雇用就農の比率が高くなっている。特に畜産では、雇用環境が整った大規模な法人経営体が県内に多いことを背景に雇用就農の割合が高く、30年度には90.6%に達している。
 

 図3は、新規就農者の部門別男女比率を示したものであるが、酪農や養豚での女性比率が高
いことがわかる。これらは、企業的な大規模経営体における雇用就農であることは言うまでも
ないが、女性が畜産分野に積極的に進出していることをうかがわせるデータである。
毎年安定的に雇用を確保している養豚経営者に話を聞くと、「社員の定年退職による世代交
代の時期にあることが背景にあるものの、農家出身でない女性が、就職先の一つとして雇用就
農を選んでいる傾向が感じられる。ただし、人材確保は年々難しい状況になっている」とのこ
とである。

 

2 「動物が好き」な女子が次代の畜産を支える

 本県農業の将来の担い手を育む群馬県立農林大学校(以下「農林大」という)では、酪農や和牛肥育について学ぶ「酪農肉牛コース」を設置している。このコースでは、入校する女子学生の比率がここ数年高まっている。過去3年間を見ても定員の半数以上を女子が占めており、農家出身でない女子が牛に憧れて入校するケースも多くなっている。
 また、学生の出身校として圧倒的に多い農業高校でも女子の比率が高いことが、こうした流れに拍車をかけている。「フラワーデザイン」「グリーンライフ」「フードビジネス」などの片仮名表記の専攻学科や、牛などの大家畜を飼育していることが、農業高校の魅力向上と、女子が集まりやすい雰囲気を作り出し、より知識を深めるために農林大に進学しているという実態がある。
 前述の「酪農肉牛コース」の女子学生たちは一様に「動物が好き」と答える。しかも、犬や猫のような愛玩動物でなく大きな牛が好きで、その瞳に癒やされるのだという。そして、卒業後は牧場などの雇用就農を選ぶ者が多く、北海道の牧場に就職する者もいる。こうした中から、将来、農業経営者として独立する者も出てくるかもしれない。
 

3 次代の担い手を確保するために

 県では、新規就農者の掘り起こしと就農相談活動を強化している。まず、県内14カ所に就農相談窓口を設置し、相談や情報提供などを行っている。また、「ぐんま就農相談会」を都内と県内を会場に開催し、畜産などの農業法人と就農希望者のマッチングの場を提供している。
 次に、若者の農業への興味・関心を高める取り組みとして、県内高校生を対象としたセミナーを開催し、酪農や肉牛経営の見学、雇用就農者による体験談や農林大生との意見交換を通じて、次代を担う人材確保と育成につなげている。
 これまでは、農業高校からの参加がほとんであったが、最近は普通高校からの参加が増加しており、「実際に見聞きしたことで、農業に対る想いが高まった」「酪農への憧れが増した」「農業の厳しさを知った」などの感想が多く寄せられている(写真1)。
 

 さらに、農業に関心のある若い女性の就農を促すため、県内の女性農業者を紹介した冊子や動画DVDを作製して、就農相談活動などにおいて活用している(写真2)。
 

 この中で、牧場に雇用就農した女性や、ブラウンスイス牛を飼育しチーズ工房を起業した女性を紹介するなど、「きらりと輝く」ぐんま農業女子を広く発信している。

4 おわりに

 農業の次代を担う人材を育成・確保していくための決定的な方策はなく、5年後、10年後を見据えた取り組みを、一つひとつ地道に実行していくしかないと考えている。
 私たちのところへ就農相談に来られる方々は、農業の魅力を熱心に語ることが多い。その中には、幼少期に体験した感覚を大人になっても持ち続け、ついには農業の門をたたくことを決心したと話す方もいる。農林大では子供たちに農業に触れる機会を作るため、保育園・幼稚園児を対象とした食農教育の場を提供している(写真3)。幼少期に農業に触れ、楽しかった思い出として残れば、大人になって農業を職業として選択するきっかけになるのではないかと期待している。
 農業法人における雇用就農者の定着状況について、残念ながら正確には把握できていない。
しかしながら、毎年雇用をしているということは、むしろ就農後の定着率が低く、退職者も一定数いることを示しているのではないだろうか。農業を一生の職業として選択し、雇用就農した人が夢と希望を持てるよう、昇任・昇給など一般企業と遜色ない待遇と、魅力的な農業経営を実現することが、農業法人に求められている。また、就農相談会に出展する際は懇切丁寧な対応を心掛け、相談者が興味をそそられるようなプレゼンができるよう工夫すべきと感じている。
 農業のやり方はさまざまである。本県農業を担う多様な担い手をひとりでも多く確保し、それぞれに合った農業経営ができるよう、県として精一杯支援していきたいと考えている。

(プロフィール)
平成元年群馬県入庁。農業技術職員として農業改良普及員、試験研究、県域普及指導員(旧専門技術員)、生産振興行政、学生教育の職場を経て平成29年から現職。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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