(1)生乳生産量
2018/19年度の生乳生産量は、879万キロリットル(906万トン相当、前年度比5.3%減)とかなり落ち込み、1995/96年度以来、23年ぶりに900万キロリットルを下回ると見込んでいる(図8)。
これは、豪州東部を中心とする干ばつにより、飼料価格の高騰およびかんがい用の取水価格上昇によるコストアップなど厳しい経営環境から、酪農家が乳牛を淘汰したためである。2019年6月末時点の乳用経産牛飼養頭数は、前年比5.2%減の148万頭に減少すると見込んでいる(図9)。
生産者支払乳価は、2019/20年度以降他の主要な乳製品輸出国との厳しい競合にさらされ、後述するように、名目ベースではわずかに上昇するものの、物価変動の影響を取り除いた実質ベースでは下落すると見込んでいる。
このような厳しい経営環境が継続することから、酪農家の増産意欲は向上せず、乳用経産牛飼養頭数は横ばいまたは減少すると見込んでおり、補助飼料給与量の増加などに伴い1頭当たり乳量の増加は期待されるものの、生乳生産量は、ほぼ横ばいで推移すると見込まれている。この結果、2023/24年度の生乳生産量は、883万キロリットル(909万トン相当、2017/18年度比5.0%減)と伸び悩み、引き続き、900万キロリットルを下回ると見込んでいる。
(2)生乳の用途別仕向け
生乳生産量の伸び悩みが予想される中、豪州国内の飲用牛乳の需要は、移民などによる人口増に伴い、拡大することを見込んでいる。
これにより、生乳生産量に占める飲用仕向け割合は、徐々に増加し、2009/10年度は25%であったものが、2018/19年度には29%に、さらに2023/24年度には31%に増加すると見込んでいる(図10)。
この結果、乳製品に仕向けられる生乳の割合は、2023/24年度には69%と7割を割り込むと見込んでいる。
また、乳製品に仕向けられる生乳量は、2018/19年度の621万7000キロリットルから、2023/24年度には607万7000キロリットルと、.3%減少すると予想されている。
(3)乳製品輸出
乳製品主要4品目の輸出量の見通しは、図11の通りである。乳製品に仕向けられる生乳量が減少すると見込まれる中、多くの乳業メーカーは、相対的に収益性が高く、今後の需要拡大が期待できるチーズ生産に注力していくと見込んでいる。
2018/19年度は、豪州国内の生乳生産動向および飲用牛乳の需要動向並びに海外の乳製品需要動向から、脱脂粉乳が14万3000トン( 前年度比8.9%減)、全粉乳が4万1000トン( 同15.8%減)、バターが1万6000トン(同1.2%減)と減少する一方、チーズについては、18万3000トン ( 同7.0%増)と増加を見込んでいる(図11)。
2023/24年度までは、引き続き、他の輸出国との厳しい競合にさらされることや、国内生産量が限定的であることから、横ばいまたは減少傾向で推移すると見込んでいる。
このような状況から、乳製品の輸出金額は、2018/19年度の34億1400万豪ドル(2765億円)から2023/24年度には、実質ベース(2018/19年度の米ドルを基準に、物価上昇分を取り除いた数値。以下同じ)で30億豪ドル(2430億円)と、12.1%減少すると見込んでいる。
(4)乳製品国際価格
2023/24年度までの主要乳製品4品目の国際価格の見通しは、名目ベースでは脱脂粉乳は2018/19年度以降、バター、チーズおよび全粉乳は2020/21年度以降上昇傾向で推移すると見込んでいるが、実質ベースでは、脱脂粉乳以外の品目は下落傾向で推移すると見込んでいる(図12)。
これは、世界的に乳製品需要は増加するものの、ニュージーランド(NZ)、EU、米国、アルゼンチンなど、主要乳製品輸出国の供給量が増加し、競合が激化すると見込まれるためとしている。
2019/20〜2023/24年度の間、バターについては、実質ベースで1トン当たり4000〜4100米ドル(44万8000円〜45万9200円)台、チーズについては同3500〜3600米ドル(39万2000円〜40万3200円)台、全粉乳については2700〜2900米ドル(30万2400円~32万4800円)台で推移すると見込んでいる。
一方、脱脂粉乳については、これまで供給過剰により低迷してきたが、今後は発展途上国での所得向上に伴う需要拡大により上昇し、2023/24年度には2500米ドル(28万円)台に回復すると見込んでいる。
(5)生産者支払乳価
豪州の生産者支払乳価は、生産量に占める国内の飲用仕向けのシェアが徐々に増加していることから、輸出仕向けのシェアは減少しているものの、いまだ約4割を占めており、乳製品国際価格の影響を受けやすい。2018/19年度は、1リットル当たり46.6豪セント(38円、前年度比1.3%高)とわずかに上昇が見込まれるものの、深刻な干ばつによる飼料価格の高騰などの生産コストの増加に見合うものではなく、酪農経営は急速に圧迫され、結果として、乳牛淘汰の増加につながっている(図13)。
2019/20年度以降は、他の主要な輸出国であるNZ、EU、米国、アルゼンチンなどと引き続き、厳しい競合にさらされることから、名目ベースではわずかに上昇するものの、実質ベースでは下落すると見込んでいる。
(6)乳製品の輸入
生乳生産量が伸び悩む一方、移民などにより人口が増加し乳製品需要が多様化する中、乳製品の主要輸出国である豪州の乳製品輸入量は増加している。
2017/18年度の乳製品主要3品目の輸入量を見ると、チーズが11万1000トン(輸出量の65%相当)、バターが3万6000トン(同222%相当)、全粉乳が2万9000トン(同60%相当)とかなりの数量を輸入に依存しており、特に、バターについては、輸出量の2倍以上の数量が輸入されている(表)。
ABARESでは、今後の予測数値は示していないものの、中期的に見ても、これまでの傾向が継続し、乳製品の輸入量は増加すると見込んでいる。