2018年の乳製品輸入は概して好調だが、ヨーグルトなどは停滞か
今般、ユーロモニターインターナショナル社から、2018年の中国の牛乳乳製品の小売動向のレポートが発行されたことを受け、同年の中国の乳製品輸入動向を改めて分析する。
2018年の牛乳乳製品の輸入量は、多くの品目で増加した。特に全粉乳(前年比10.8%増)、脱脂粉乳(同13.4%増)、育児用調製粉乳(以下「育粉」という)(同11.0%増)、バター(同32.3%増)は大幅に増加した(表15)。
一方で、チーズは横ばいとなり、クリームとヨーグルトは減少した。
全粉乳は、生乳の代替として広く使われており、近年、生乳に対する価格優位性を背景に使用量が増えているといわれている。
育粉の輸入量は、長期にわたって増加を続けている。2017年12月以降、従来20%であった育粉の輸入関税が暫定的に撤廃されたことで、2018年はより輸入量が増えたものと考えられる。
脱脂粉乳は、2018年の輸入量が2014年を上回り、過去最高となった。脱脂粉乳に脂肪分を加えて全粉乳の代替としても使われる。近年、全粉乳に比べて国際価格が安くなったことで、全粉乳の代替品としての需要が増えている可能性がある(図26)。なお、中国国内では脱脂粉乳はほとんど製造されていない。
チーズの輸入量は横ばいであった一方、小売の販売量は前年比9%増の3万8400トンだった。近年、中国では紅茶にクリームチーズをトッピングした飲み物が流行している。フォンテラ社によると、同社は中国で、1年間にこの飲み物8000万杯分のクリームチーズを供給している。同社はクリームチーズ需要の増大に対応するため、ニュージーランドのカンタベリー地方に新たな製造ラインを整備する計画を発表しており、1基は2018年8月まで、もう1基は2019年または2020年に完成するとしている。クリームチーズの生産能力はそれぞれ年間2万4000トンとされている。
クリームの輸入量は、わずかに減少したものの、過去2番目に高い水準であった。中国のクリーム消費はほとんどが業務用と言われる。生クリームをトッピングしたコーヒーなど新たな消費形態の広まりなどにより、消費は増加している。
バターの輸入量は、前年比32.3%増と大幅に増えた。中国では主に業務用としてクロワッサンや菓子パンなどの原料として多く使われている。近年、「ザンザンバオ」と呼ばれるチョコレートクロワッサンのようなパンが流行しており、これの原料として大量のシートバターが消費されているといわれる。中国へシートバターを供給しているフォンテラ社によると、同社はこの需要に対応するため2018年9月から新たなシートバターの製造ラインを稼働させ、生産能力を年間4500トンから7000トンに拡大したとのことである。一方、家庭向けのバター販売量は限られていて、販売形態も少量パックが多い。2018年の小売販売量は1万5200トンである。
ヨーグルトの輸入量は、わずかに減少したものの、過去2番目に多い2万7000トンであった。一方、小売の販売量は前年比11%増の951万トンと好調であった。ヨーグルトのうち8割を飲むタイプが占め、その中でも常温保存できる商品が人気だといわれる。
生乳価格は上昇傾向で推移
2018年の生乳価格(主要10省・自治区)は、8月まで前年を下回って推移してきたが、9月ごろから前年を上回り、2019年に入っても高水準で推移している(図27)。現地専門家によると、飼料価格の上昇や環境規制による農場閉鎖によって供給が減り、需給がタイトになったことが原因といわれている。
(調査情報部 寺西 梨衣)