アフリカ豚コレラが続発
中国では2018年8月に初めてアフリカ豚コレラ(以下「ASF」という)の発生が確認されて以来、全国に拡大し、2019年4月19日の海南省での発生により、中国本土の全31省・自治区・直轄市で91例が確認されたことになった。現地報道によると、4月8日までに殺処分された豚は101万頭に上るとされている。
中国政府は、ASFが発生した県、市、省などからの子豚や生体豚、豚肉などの搬出を制限していたが、2018年12月27日付け通知で、一定の条件を満たすものについては搬出の制限を緩和した
(注1)。しかしながら、5月4日時点で8省・自治区・直轄市で制限が解除されていないため、子豚や豚肉などの流通への影響が懸念される(図15)。
豚飼養頭数が大幅に減少
中国国家統計局によると、2018年末の豚の飼養頭数は4億2817万頭と前年から3%減少している。さらに、2019年3月末時点では3億7500頭と、2018年末から12.4%減、前年同期比10.1%減となっており、ASFの影響が顕在化してきたと考えられる(図16)。
一方で、大規模と畜場におけると畜頭数(注2)は、2017年3月から2018年11月まで長期にわたって前年同月を上回って推移し、その後、2019年1月を除き、前年同月を下回って推移しているが、これまでのところ、需要が高まる春節(旧正月、1月後半から2月)前の12月から1月にと畜頭数が増加し、その後減少する例年の傾向に一致している(表12)。
注2:年間2万頭以上の豚を処理すると畜場。中国農業農村部「中国畜牧獣医年鑑」によると2016年時点で全国に2907カ所あり、と畜頭数は全体の3割を占める。
豚肉小売価格および子豚価格が上昇
春節後は例年ならば消費減退期となるにも関わらず、豚肉小売価格は上昇している。この要因の一つとして、豚飼養頭数の大幅な減少が考えられるが、中国農業農村部は、今後さらに飼養頭数が減少することで、需要のピークである春節前の年末には豚肉価格が急上昇する可能性があると述べている。
子豚価格についても、ASFのリスク回避のために多くの肥育農家が子豚の導入を見送っていたことなどにより2018年秋頃から下がり続けていたが、2019年2月以降は上昇に転じている。中国農業農村部によれば、大規模農家が子豚の導入を再開していることが要因といわれている(図17)。
豚肉輸入量はやや増加
2019年1〜3月の豚肉の輸入量は、前年同期比3.2%増の33万トンとなった。米国からの輸入は2018年4月と6月にそれぞれ25%の追加関税が課されたため大幅に減っており、前年同期比35.6%減となった。一方で、ドイツ以外の主要輸出国からの輸入量はかなりまたは大幅に増加している(表13)。
また、米国から中国への週当たりの豚肉の輸出量をみると、追加関税が課された2018年6月以降は大幅に減少していたが、2019年2月以降は例年の2〜3倍の水準で推移している(図18)。今後の輸入量の推移に注視する必要がある。
中国の豚肉輸入量は、これまでも、環境規制の強化などによる国内の豚肉生産量の減少を受け、増加傾向で推移してきた。米国農務省海外農業局のレポートによると、2019年の中国の豚肉輸入量は過去最高に達すると予測されており、需要のピークである春節前の年末に向け、輸入量は増加すると考えられる。
(調査情報部 寺西 梨衣)