2月の生乳出荷量は前年同月と同水準
欧州委員会によると、2019年2月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月と同水準の1211万2330トンとなった(図19)。生乳出荷量は、2018年の夏に複数のEU加盟国が干ばつに見舞われた影響で増加傾向に歯止めがかかった。2018年8月以降は、前年同月比0.2%増〜同0.8%減で推移し、2019年2月は同0.1%増となった。
2月の出荷量を加盟国別にみると、ポーランド(前年同月比4.0%増)、アイルランド(同3.3%増)、英国(同3.1%増)、イタリア(同2.4%増)、デンマーク(同2.0%増)、ベルギー(同1.2%増)で増加した(表14)。増加率の最も大きいポーランドは、2016年11月以降、28カ月連続で増産を維持している。同国は、旧東欧諸国の中で最大の農業国であり、EUにおける重要な農業国の一つである。2015年3月の生乳クオータ制度廃止を機に、生乳生産量を拡大させており、生乳出荷量はEU第5位(2018年)、また乳製品の主要輸出国でもある。
一方、スペイン(同3.0%減)、フランス(同2.5%減)、オランダ(同1.8%減)では減少した。ポーランドとは対照的に前年を下回る水準で推移しているのはオランダである。同国は、2018年2月以降、13カ月連続で前年を下回って推移している。これは、2017年にリン酸塩排出削減のために乳牛の
淘汰を行ったことによるものである。
欧州委員会は、4月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、2019年の生乳出荷量を、前年比0.7%増と見込んでいる。2018年の干ばつの影響は2019年の第1四半期までは続くとみられるものの、その後は、EU産乳製品の輸出需要に支えられ、生産量が増加するとみられる。なお、2020年は同0.8%増と見込んでいる。
3月の生乳価格は前年同月比高
欧州委員会によると、3月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比2.4%高の100キログラム当たり34.39ユーロ(1キログラム当たり43.33円:1ユーロ=126円)となった(図20)。乳価は、2018年4月以後、連続して前年同月比安で推移していたが、2019年2月は11カ月ぶりに前年同月を上回り、2カ月連続で前年同月比高となった。これは、2018年8月以降、生乳の増産傾向に歯止めがかかり、2018年11月〜2019年1月の生乳出荷量は同0.7%減〜同0.8%減で推移したことなどによるものと考えられる。
有機の生乳生産量は増加傾向
こうした中、欧州委員会が3月に公表した有機農業に関する報告書によると、有機の生乳生産量は増加傾向にあり、特に主要生産国を含む西欧(EU15カ国)での伸びが大きい。しかしながら、生乳生産量全体に占める有機の生乳生産量の割合は小さく、2017年についても3%を下回っている。
2012〜2017年の間に、EU全体で有機の生乳を生産する乳牛の飼養頭数は、年5.7%程度の割合で増加し、有機の生乳生産量は年6.3%程度の割合で増加している。
2012年と2017年を比較すると、ポーランド、エストニアを除く国で生産量が増加した。なお、ドイツ、フランス、オーストリアの3カ国で、EUの有機の生乳を生産する乳牛の飼養頭数の51%を占めている。
各国内で生乳生産量に占める有機の生乳の割合が最も高いのは、他国と比べて総利用農地に占める有機農業の取り組み面積の割合が高いオーストリア(シェア16%)である。次いで、スウェーデン(同15%)となっている。なお、有機の生乳の仕向け先として最も大きいのは、飲用乳向けとなっている。
(調査情報部 前田 絵梨)