ここで、認証を取得し活動を行う大阪府立農芸高等学校(以下「大阪農芸」という)の事例を紹介する。
大阪農芸は府内の高校で唯一乳牛を飼養しており、平成31年4月に創立102年目を迎えた伝統ある農業高校である。30年度には文部科学省より「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」に指定され、授業を活用した酪農教育ファーム活動が展開されている。
大阪農芸の酪農教育ファーム活動は、活動に取り組みたいという生徒たちの熱意から始まった。27年、当時の3年生が過去の酪農教育ファーム活動に関する卒業論文に興味を持ったのをきっかけに活動に取り組み始め、2年間独自に進めたのち、本格的な活動を目指すため地域の食育推進や府内酪農家へ活動を広げることを目的に据え、29年度に牧場認証を取得した。
牧場の認証を取得するためには、地域の推進委員会による現地審査、認証審査委員会による書類審査をクリアし(主に安全・衛生面で体験に適した場かどうかを審査)、かつ1名以上が書類審査をクリア(主に活動への熱意を審査)した後認証研修会を受講してファシリテーターの認証を取得しなければならない。大阪農芸では資源動物科・酪農専攻の田中怜先生がファシリテーターとなったが、活動の主役はあくまで生徒であり、田中先生はファシリテーターとして活動の指導、アドバイスを実施し、活動のサポートを行っている。
同校では、酪農教育ファーム活動が実習の一つとして授業に組み込まれており、生徒たちが近隣の小学生に食育を実践している。授業を通じて生徒自身が食育について学ぶ機会にもなっており、学ばせながら学ぶという相乗効果が生まれているそうだ。
酪農教育ファーム活動に携わった生徒にアンケート調査を実施したところ、初めて活動を行ったときは、伝える難しさや反省が多い傾向にあったが、2回目以降は、成長を実感する生徒が増えた。その理由として、児童への説明や、運営、実施を通して反省点を改善し、2回目の実施に生かしたことなどが挙げられ、さらに、「もっといろいろな話をしてあげたかった」と、3回目の実施に向けた意見もみられ、活動に対する意欲の高さがうかがえた。
酪農教育ファーム活動を通じて生徒は学びを積み重ねて成長し、酪農・畜産分野の大学や農業大学校への進学など希望の進路を実現している。大学、農業大学校などを卒業し、直接的または間接的にでもわが国の酪農業に貢献できる人材となることを期待していると田中先生は語った。