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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報 2019年7月号

第1四半期の脱脂粉乳輸出量は、前年同期を大幅に上回る

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3月の生乳出荷量は前年同月比増
 欧州委員会によると、2019年3月の生乳出荷量(EU28カ国)は、複数の加盟国で前年同月に比べ増加し、前年同月をわずかに上回る1391万290トンとなった(図10)。生乳出荷量は、2018年の夏の干ばつの影響で増加傾向に歯止めがかかり、2018年9月以降は前年同月比0.1〜0.8%減で推移していたが、2019年2月に同0.1%増、3月に同1.5%増となり、生産が回復してきた。
 欧州委員会は、4月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、2019年第1四半期の生乳出荷量を、2018年の干ばつの影響による粗飼料不足から、より多くの配合飼料が使用されることにより、減産は限定的とし前年同期比1%減と見込んでいた。しかしながら、第1四半期の生乳出荷量は、前年同期比0.3%増の3893万5620トンと、予想を上回るものとなった。

 

 3月の出荷量を加盟国別にみると、酪農部門の拡大を進めるアイルランド(前年同月比11.1%増)やポーランド(同4.4%増)、英国(同4.1%増)、デンマーク(同3.0%増)などでは増加した(表11)。ドイツの出荷量は、2018年夏の干ばつによる飼料不足の影響により、2018年10月以降は前年同月を下回って推移していたが、2019年3月は6カ月ぶりに前年同月を上回った。一方、2017年にリン酸塩排出削減のために乳牛のとうを行ったオランダ(同2.4%減)は14カ月連続で、干ばつによる飼料不足の影響などが続くフランス(同0.8%減)は8カ月連続で前年を下回って推移した。
 

 

第1四半期の乳製品輸出量は脱脂粉乳およびチーズが前年同期比増
 欧州委員会によると、2019年第1四半期のEUの乳製品輸出量は、脱脂粉乳およびチーズがそれぞれ前年同期比35.1%増の26万1908トン、同2.4%増の20万8950トンとなった一方で、全粉乳およびバターは、同25.9%減の7万163トン、同14.6%減の3万2418トンとなった(表12)。
 EU産脱脂粉乳は2018年9月以降、おおむね他の主要輸出国産脱脂粉乳に対し価格面で優位に推移した(図11)。このため、脱脂粉乳の輸出量は、同9月以降、7カ月連続で前年同月を上回って推移した。2019年第1四半期の最大の輸出先はインドネシア、第2位は中国、第3位はアルジェリアとなっており、輸出先の多くで輸出量が増加した。なお、最大の輸出国はドイツで5万3485トン、第2位はベルギーで4万7732トン、第3位はフランス4万6892トンとなった。
 チーズの輸出量は、月ごとで対前年同月比の増減はあるものの、その種類の豊富さやブランド力などにより輸出は拡大傾向で推移している。2019年1月および2月は前年同月比増、3月は減で推移した。2019年第1四半期の最大の輸出先は米国、第2位は日本、第3位はスイスであった。なお、最大の輸出国はオランダで3万5454トン、第2位はドイツで3万4522トン、第3位はフランスで2万9331トンとなった。
 全粉乳およびバターは、世界最大の輸出国であるニュージーランドが輸出を伸ばす一方で、EUからの輸出は減少した。全粉乳の2019年第1四半期の最大の輸出先はオマーン、第2位はクウェート、第3位は中国であった。なお、最大の輸出国はオランダで2万8383トン、第2位はデンマークで1万2192トン、第3位はスウェーデンで5894トンとなった。また、バターの最大の輸出先は米国、第2位は中国、第3位はサウジアラビアであった。なお、最大の輸出国はフランスで8134トン、第2位はアイルランドで7910トン、第3位はデンマークで5511トンとなった。
 こうした中で、欧州委員会は、4月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、脱脂粉乳の輸出量を2019年は前年比3.0%増、2020年は同1.0%減、チーズは同1.0%増、同1.5%増、全粉乳は同8.0%減、同5.0%減、バターは同2.0%増、同7.0%増となると見込んでいる。

 



 
(調査情報部 前田 絵梨)