「和牛入門講座」(以下「入門講座」という)は、年々、担い手の高齢化や後継者不足が深刻化する中、和牛繁殖経営に興味を持ってもらうための取り組みとして、平成19年度から岡山県の単独事業として始まりました。
受講対象者は、和牛の飼育に興味があり、将来岡山県で和牛繁殖経営を希望していることが条件で、無料で受講することができます。ただし、県外から受講される方は、岡山県へ移住後に受講していただいています。
和牛の繁殖経営は、畜産経営の中でも比較的未経験者が取り組みやすいと考えられています。その理由としては、①経営開始時に設備投資にかかる費用が他畜種と比較して低いこと②肥育経営と比較して所得率が高いこと③他業種や他部門の農業との併用が行いやすいことなどが挙げられます。
入門講座は、通常8月に開講式を行い、翌年1月の子牛市の日に修了となります。実際のカリキュラムは、座学と牧場体験実習から成っていて、座学は2回、牧場体験実習は2回以上と年間合計4回以上受講する必要があります(写真1)。 具体的には、8月に表1の通り和牛繁殖の基礎知識として三つの講座を受講します。また、会場となっている農林水産総合センター畜産研究所に整備されている監視カメラや牛恩恵、哺乳ロボットなどの最新技術や種雄牛の見学も行います(写真2)。
続いて、9月から12月までの間に、県内の先進農家にご協力いただき、牧場体験実習を行います(写真3、4)。
受講生は最低2戸以上のさまざまなタイプの経営体で、餌やりや牛舎掃除、電気柵の設置や発情の見分け方などを実習します。
最後に、岡山県における子牛の流通を知るため、総合家畜市場を視察し、併せて閉講式となります。閉講式では、受講生の感想や今後の目標などを発表後、修了証の授与となります。その際に、受講生に関係するJAや県民局などの指導者にも参加してもらい、就農相談会も行います。
受講生の募集については、関係機関への開催案内パンフレットの配布、新・農業人フェアでのPR、JAや市町村の広報誌や当畜産協会のホームページへの掲載などを行い、参加を呼びかけています。
30年度までの受講者数は延べ108人で、受講生の職種は表2の通りで、年齢層も16歳から81歳までと幅広くなっています。 受講した動機は、①畜産の世界への憧れ②労力負担の軽減を求めて酪農家からの転業③もと牛の安定的確保を目指した一貫経営への転換④耕作放棄地の解消などが挙げられます。