スペインを除く主要国のほとんどが減産傾向
欧州委員会によると、2019年3月の豚肉生産量(EU28カ国)は、前年同月比4.3% 減の198万2840トンと、前月の同2.5%増から減少に転じた(図6)。同年1月から3月までの累計でみると、前年同期比で0.7%の減少となっている(表5)。
同期間の生産量について主要生産国別にみると、EU最大のドイツが同3.8%減、同3位のフランスが同0.5%減、同4位のポーランドが同1.4%減と、多くの主要国が減産傾向で推移していることがわかる。これらは、主に2018年から2019年初めにかけて豚価が長期にわたって低水準で推移した影響とみられている。一方、近年好調な輸出により増産傾向で推移している同2位のスペインは同3.5%増となり、多くの主要国の減産分の一部を補完した。
なお、欧州委員会は、7月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、世界的な需要の増加に加え、EUの豚価が上昇していることから、今後、EUの豚肉供給はおおむね安定した状態を維持するとみられ、2019年の豚肉生産量は前年並み(前年比0.3%増)と見込んでいる。
輸出はかなりの増加
欧州委員会によると、2019年4月の豚肉(生鮮・冷蔵、冷凍)輸出量(EU28カ国)は、前年同月比30.5%増の21万8549トンとな った。
同年1月から4月までの累計でみると、同輸出量は、前年同期比15.1%増の83万2329トンとなった(表6)。輸出先別に見ると、最大の輸出先である中国向けが、同国で発生したアフリカ豚コレラ(ASF)の影響による需要増加により同44.3%増と増加している。その他、豪州向け(同18.9%増)、日本向け(同7.3%増)も増加している。一方、米国向け(同15.3%減)、韓国向け(同 10.8%減)などは減少している。
豚価、4カ月連続で上昇
欧州委員会によると、豚枝肉卸売価格(EU28カ国)は、前月比で4カ月連続の上昇となり、5月は、前年同月比21.9%高の100キログラム当たり172.61ユーロ(2万1404円:1ユーロ=124円)となった(図7)。前年から今年初めまで低水準で推移した期間が長く続いたものの、今年3月以降急上昇して いる。
価格上昇の要因として、生産量が伸びない中、BBQ需要が高まる時期に入ったほか、 中国や日本などの輸出需要の増加などが考えられる。現地報道では、市場への供給不足や豚価の急上昇から食肉加工事業者の経営への影響などが伝えられている一方、価格動向は安定 に向かっているという見方も報じられている。
(調査情報部 国際調査グループ)