(1)特定技能外国人について
新たな在留資格「特定技能」は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類あるが、農業分野においては「特定技能1号」での受入れのみである。
在留期間については、1年、6カ月または4カ月ごとの更新となるが、通算では5年が上限となる。「特定技能1号」を取得した外国人材(以下「特定技能外国人」という)は、受入れ分野に関する相当程度の知識・経験を必要とする技能を有している必要がある。そのため、(1)技能実習2号を良好に修了しているか(2)技能試験および日本語試験に合格するか─のいずれかを満たさなければならない。
特定技能外国人を受け入れる機関(受入れ機関)は、これらの要件を満たした外国人と雇用契約を結んだ上で、最寄りの地方出入国在留管理局に各種申請を行うことになるが、この場合、
①現在海外にいる外国人材(技能実習OBや現地での日本語試験・技能試験合格者)を受け入れる場合は、在留認定証明書の交付申請
②現在日本国内に在留中の外国人材(技能実習2号を良好に修了した者など)を受け入れる場合は、在留資格の変更許可申請を行うことになる(図2)。
先に述べた通り、特定技能外国人の在留期間は、通算で上限5年となっており、一時帰国することも可能となっている。このため、5年間継続して働いてもらうことに加え、例えば6カ月間在留した後、いったん帰国し、再度6カ月間在留する、というサイクルを在留期間の通算が5年間となるまで繰り返すといった働き方も可能である(図3)。
また、今回の制度では、在留期間の通算が5年を超えなければ、同一の業務区分(耕種農業又は畜産農業)内での転職も可能となるため、最初に雇用契約を結んだ農業者の下での雇用期間が終わった後、別の農業者と雇用契約を改めて締結して働いてもらうことも可能となる。ただし、雇用先が変更となる場合は、新たに在留資格変更許可を受けなければならないので注意が必要である。
(2)従事する業務について
農業分野における特定技能外国人の業務としては、主として①耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷、選別など)または②畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷、選別など)に従事することが必要となるが、特に①栽培管理もしくは②飼養管理は必ず業務として含まれていなければならない。例えば、農産物の選別の業務のみに専ら従事させるといったことはできない点に注意が必要である。
また、これらの主たる業務以外に、同じ受け入れ機関の下で就労している日本人従業員が普段から従事している関連業務(加工・運搬・販売の作業、冬場の除雪作業など)にも付随的に従事させることもできるが、関連業務のみ専ら従事させるということができない点に注意が必要である。
(3)農業分野における受入れ機関の基準について
農業分野では、受入れ機関について分野横断的な各種基準に加えて、主に2点追加の基準を設けている。
まず1点目として、受入れ機関は、「農業特定技能協議会」に加入し、協議会に対して必要な協力を行う必要がある(詳細は後述3を参照)。
2点目は、適切な労務管理の確保を図る観点から、受入れ機関が特定技能外国人を直接雇用する場合、過去5年以内に労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6カ月以上継続して雇用した経験がある必要がある。
また、農業分野においては、直接雇用形態だけでなく派遣形態での受け入れが認められている。もし農業者が、受入れ機関となった派遣事業者から特定技能外国人を派遣してもらうような場合、派遣先である農業者においては、過去5年以内に労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6カ月以上継続して雇用した経験があるか、もしそのような経験がない場合は派遣先責任者講習その他労働者派遣法における派遣先の講ずべき措置などの解説が行われる講習を受講 した者を派遣先責任者として選任していることが必要となるので、ご注意願いたい。
(4)特定技能外国人への「支援」について
特定技能外国人の受入れに際しては、特定技能外国人がその活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするため、職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援を行うための計画(支援計画)を作成し、当該支援計画に基づく支援を行うことが必要となる(図4)。
ただし、受入れ機関自らがそのような支援を行うことが困難である場合は、「登録支援機関」にその全部の実施を委託することも可能となっているので、それぞれの現場の状況に応じて検討をお願いしたい。
(5)その他
最後に、特定技能外国人を実際に受け入れた後に、雇用契約や支援計画に変更などがあった場合や、四半期ごとの受入れの状況などについて、地方出入国在留管理局に対する各種の届出が義務付けられている(表)。
それぞれの事由が生じた日から14日以内に届け出る必要があり、届出をしなかったり、虚偽の届出を行ったりした場合は罰則の対象となるので、適切に対応願いたい。