上半期の生乳生産量は前年同期並み
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2019年7月22日に公表した「Milk Production」によると、6月の全米の生乳生産量は、1頭当たり泌乳量が887キログラムと前年同月を0.6%上回った一方、乳用経産牛飼養頭数が同1.0%減の932万3000頭であったことから、同0.3%減の826万9000トンと、前月に続き2カ月連続で前年同月を下回った(図10)。ただし、1〜6月には前年同月をわずかに上回る月もあったため、2019年上半期の生乳生産量は、前年同期並みの4998万7000トンとなった。
乳用牛飼養頭数の減少が継続
現地業界紙によると、酪農経営の収益性悪化を背景に乳用経産牛のと畜頭数が高水準で推移しているとみられ、本年上半期のと畜頭数は166万1700頭(前年同期比4.3%増)となった。こうしたことから、乳用経産牛飼養頭数は2018年7月以降12カ月連続で前年同月を下回って推移しており、USDA/NASSが7月19日に公表した「Cattle」においても、7月1日時点の乳用牛飼養頭数は、乳用経産牛が前年比1.1%減の930万頭、乳用繁殖後継牛は同2.4%減の410万頭であった(本誌27ページ表1参照)。このうち、同時点における乳用繁殖後継牛頭数が前年を下回ったのは、2012年以来7年ぶりである。
チーズは需要増から増産も在庫は減少
USDA/NASSが2019年8月1日に公表した「Dairy Products」によると、2019年6月のチーズの生産量は48万7000トンとなり、前年同月を0.6%上回った。国内外の需要は堅調に推移しており、USDA/NASSが7月22日に公表した「Cold Storage」によると、2019年6月末時点のチーズ在庫は62万7000トン(前年同月比0.5%減)と、例年であれば在庫を積み増す時期であるにもかかわらず、2カ月連続で取り崩された(図 11)。また、チーズ在庫が前年同月を下回ったのは、2014年10月末時点以来、56カ月ぶりのことである。
チーズ以外の乳製品輸出量は低調
米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、2019年5月の乳製品輸出額はチーズ輸出が堅調であったことなどから、53億9100万米ドル(5930億1000万円:1米ドル=110円)となり、同月としては過去4年間で最多となった。しかし、輸出量の観点からみると、チーズを除く主要乳製品は軒並み前年同月を下回っており、これは1〜5月の輸出量においても同様である(表7)。
同月の輸出量を品目別にみると、チーズはメキシコ向けが前年を下回ったものの、韓国向けや日本向けが堅調であったことから、前年同月比10.9%増の3万3123トンとなった。一方、バターは競合国との価格競争を背景に、同40.8%減の2343トンとなった。また、脱脂粉乳やホエイは、中国向けの減少に伴ってそれぞれ6万3607トン(前年同月比9.4%減)、3万7961トン(同28.8%減)となった。このうちホエイについて、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は、中国による追加関税の影響に加え、アフリカ豚コレラの発生に伴って同国の飼料用ホエイ需要が減少している可能性を示唆している。
(調査情報部 野田 圭介)