輸出量全体では3.0%減とやや減少
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、米国の牛肉輸出量は、世界的な牛肉需要増などを背景に過去最高となった2018年の反動もあり、2019年6月は前年同月比0.4%減の12万4302トンと減少し、6カ月連続して前年を下回った(表1)。
輸出相手国別にみると、輸出先首位の日本は同11.3%減の3万3155トンとかなり大きく減少したほか、第3位のメキシコ向けも同8.5%減の1万5631トン、第4位のカナダ向けも同15.8%減の1万272トンとそれぞれ減少した。一方、第2位の韓国向けは同14.6%増の3万719トンとかなり大きく増加している。
この結果、2019年上半期の牛肉輸出量は前年同期比3.0%減の67万3918トンとなった。輸出相手国別では、日本向けが同5.8%減の18万4096トン、カナダ向けが同14.6%減の5万9116トン、香港向けが同36.5%減の4万5007トンと減少したのに対し、韓国向けが同12.3%増の15万3324トン、メキシコ向けが同3.5%増の9万9755トンと増加した。
このような状況について、USDAや米国食肉輸出連合会(USMEF)などによると、日本向けは、関税面で他国が優位となった影響があるとし、国内の肉用牛生産が好調なカナダ向けも減少したとのことである。最も減少幅の大きい香港向けについては、米中貿易摩擦が影響したとされる。
一方、韓国向けは、米国産牛肉が市場に拡大・浸透し、かつ、米韓自由貿易協定(KORUS)によって削減される関税面での恩恵(当初の37.3%から2026年に向けて段階的に削減。2019年1月から18.7%。2026年に0%)も後押しした結果、非常に好調に推移したとしている。メキシコ向けについても、米国産牛肉への需要が好調なため増加したとされる。
USMEFは2019年8月5日付のプレスリリースにおいて、「昨年、韓国向けはメキシコ向けを抜き第2位となり、2019年も好調を維持した結果、首位の日本向けに迫る水準となっている。6月も記録的ペースでの輸出となり、現在の韓国の冷蔵品牛肉輸入量の61%を米国産が占めるに至った。台湾向けも非常に堅調に推移しており、昨年の記録的ペースを上回っている」とコメントしている。
2019年上半期の生体牛輸入頭数、大幅に増加
米国の生体牛輸入頭数は2019年1月以降、 過去5年平均を上回る高水準で推移している。USDA/ERSによると、6月は前年同月比2.7%減の15万436頭と6 ヵ月振りに前年を下回ったものの、2019年上半期でみると前年同期比17.2%増の112万9956頭と大幅に増加した(表2)。
上半期の生体牛輸入についてみると、輸入頭数の約63%がメキシコから、約37%がカナダから輸入されている状況にある。うち、生体重400〜700ポンドの生体牛輸入が2/3を占め、そのほとんどがメキシコから輸入されている。メキシコ産生体牛は、フィードロ ットに出荷される前の補助的育成段階(バックグラウンディング)に仕向けられる子牛や肥育もと牛とみられる。一方、と畜場直行牛は、ほぼ全量がカナダから輸入されているという特徴がある。
USDAによると、生体牛輸入頭数が増加している背景として、米国内の肥育もと牛および肥育牛相場が好調なことを挙げており、相対的に安価なメキシコ産およびカナダ産の生体牛を輸入する者(バックグラウンダー、フィードロット、パッカー)がそれぞれの段階で恩恵を受けているものと考えられる。
なお、USDAは2019〜2020年にかけても生体牛輸入の増加は継続するとしており、年間生体牛輸入頭数は210〜215万頭程度になると見込んでいる。
(調査情報部 藤原 琢也)