令和元年8月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり150円と前月から横ばいで推移し、平成29年11月以降、令和元年5月を除き、前年同月を下回った(図16)。
鶏卵相場は、例年、梅雨明け後の気温上昇に伴って低下し、夏場の不需要期に底を迎える傾向にある。本年度においては、生産調整の影響などにより、6月中旬以降の供給量が減少した一方、暑さによる家庭での調理機会の減少からテーブルエッグ需要などが減少したため、需給が均衡し、相場展開はもちあいが続いた。
今後について、供給面では、例年に比べて残暑が続く予報があり、産卵数や個卵重の回復の遅れが予想されるものの、生産調整明けの鶏群の産卵復帰などを背景に供給量は段階的な増加が見込まれる。需要面では、残暑による食欲の減退が予想されるものの、学校給食の再開や大手外食チェーンのプロモーションなどによる回復が見込まれる。一方、在庫が積み上がっている状態であることから、季節的な秋口の価格回復は、例年よりやや遅れ、しばらくもちあいが続いた後、徐々に上昇基調に転じるとの見方が強い。
元年上半期の鶏卵輸出額、前年同期を大幅に上回る
農林水産省は8月9日、元年1〜6月(上半期)の農林水産物・食品の輸出実績を公表した。鶏卵の輸出額を見ると、9億8000万円(前年同期比56.2%増)と前年同期を大幅に上回った(図17)。
その輸出のほとんどは香港へ向けられており、日本産鶏卵は生産から流通販売までの品質・衛生管理について定評があることなどから、30年までの過去6年の輸出量・輸出額はともに過去最高を記録し、元年度上半期においても過去最高となるペースを維持している。これは、近年の生や半熟での消費に適した品質を強調した商品の海外へのプロモーション効果による現地小売店での販売に加え、日本食店やホテルなどでも需要が高まっていることが背景にある。また、平成30年10月の米国向け食用生鮮殻付鶏卵の輸出解禁を受け、今年に入ってからグアムに輸出されるなど、輸出対象国の拡大も進んでいることから、さらなる盛り上がりが期待される。
成鶏更新・空舎延長事業、9月2日付けで発動終了
9月3日の鶏卵の標準取引価格が168円となり、安定基準価格の163円を上回ったため、一般社団法人日本養鶏協会は、同日、成鶏更新・空舎延長事業
(注)における成鶏の出荷期間を9月2日付けで終了すると発表した。これにより、元年5月20日から3カ月以上続いた同事業の発動が終了した。
注:「成鶏更新・空舎延長事業」とは、一般社団法人日本養鶏協会が実施する鶏卵生産者経営安定対策事業のうちの一つ。需給改善を図ることを目的とし、当該日の標準取引価格が安定基準価格を下回った30日前から安定基準価格を上回る日の前日までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設けた生産者に対して、奨励金を交付するもの。
(畜産振興部 郡司 紗千代)