豚肉の生産量は、デンマークでかなりの程度減少
欧州委員会によると、2019年5月の豚肉生産量(EU28カ国)は、前年同月比3.5%減の194万8270トンとなった(図7)。と畜頭数は同3.8%減の2105万頭、1頭当たり枝肉重量は同0.3%増の92.6キログラムとなった。
月ごとの豚肉生産量は、前年同月比で増減を繰り返しながら推移しているが、同年1〜5月までの累計では前年同期比0.7%減の1007万3510トンとなった(表6)。同期間の生産量について主要生産国別にみると、好調な輸出を背景に増産傾向にあるスペイン(前年同期比2.6%増)のほか、オランダ(同1.1%増)、フランス(同0.9%増)で増加した一方、デンマーク(同7.0%減)、ドイツ(同 2.9%減)、ポーランド(同2.8%減)、イタ リア(同1.2%減)では減少した。
現時点までの豚肉生産量の減少は、2018年から2019年初めにかけて豚価が低迷したことによる影響とみられる。しかしながら、輸出の増加によりEUの豚価が上昇していることから、EUの豚肉供給はおおむね安定し、欧州委員会は7月に公表した農畜産物の短期的需給見通しにおいて、2019年の豚肉生産量は前年並み(前年比0.3%増)になると見込んでいる。
7月のデンマークの豚飼養頭数は、前年を2.5%下回る
2019年1〜5月の豚肉生産量が前年同期比で最も減少したのは、デンマークであった。デンマークは、ドイツ、スペイン、フランス、ポーランドに次ぐ、EU第5位(2018年)の豚肉生産国であるが、同期間の豚肉生産量は、オランダ、イタリアに次ぐ第7位となり、順位を落としている。
デンマーク統計局が四半期ごとに公表している豚の飼養頭数によると、デンマークの2019年7月の豚飼養頭数は、前年を2.5%下回る1255万頭と、3四半期連続で前年を下回って推移した(表7)。豚飼養頭数は、2017年の第3四半期以降、拡大傾向にあったものの、豚価の低迷により、徐々に拡大ペースが減速し、2019年1月に7四半期ぶりに減少に転じた。
豚飼養頭数は引き続き減少しているものの、4月と7月の頭数を前年同日比(増減率)で比較すると、ほとんどの項目で7月は4月よりも減少率が小さくなっている。
なお、7月の飼養頭数が最も減少したのは「肥育豚(50キログラム超)⑩」(前年比 6.3%減、18万8000頭減)で、前年をかなり下回る279万5000頭となった。
デンマークは、EU最大の子豚(50キログラム未満)の輸出国であり、2018年は1520万3323頭をEU域内・域外へ輸出した(図8)。欧州委員会によると、デンマークの2018年の豚と畜頭数は1808万5700頭(豚肉生産量は158万1300トン)であることからも、子豚輸出が盛んな国であることがわかる。なお、子豚の主な輸出先はドイツおよびポーランドで、当該2カ国への輸出頭数の合計は、輸出頭数全体の9割近くを占めている。
デンマークでの飼養頭数が減少しているにもかかわらず、2019年1〜5月の子豚輸出頭数をみると前年同期比0.7%増となっており、豚肉生産の減少は子豚輸出の動向にも影響を受けていると考えられる(図9)。
(調査情報部 前田 絵梨)