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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報 2019年10月号

2019年上半期のバター輸出量はかなりの増加

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2019年上半期の輸出量は前年同期比7.4%増
 欧州委員会によると、EUの6月のバター輸出量は前年同月比42.3%増の1万2621トンとなった。輸出量は4月以降、3カ月連続で前年同月を上回って推移しており、2019年上半期の輸出量は前年同期比7.4%増の7万5536トンとなった(図16)。
 

 同期間のバターの最大の輸出先は米国(1万7322トン、前年同期比42.0%増)、第2位は日本(5206トン、同37.3%増)、第3位は中国(4558トン、同7.3%増)などとなっている(表15)。



国際需給が緩和傾向に向かう中、価格競争力の高まりが原因
 バター輸出量増加の原因は、バターの国際需給が4月以降緩和傾向に向かう中、EU産バター価格が下落したことにより、価格競争力が高まっていることが挙げられる。こうした中、2019年8月20日に開催された乳製品の国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT)(注1)のバターの100キログラム当たりの平均取引価格は、前年比8.4%安の402.5米ドル(4万3068円、1米ドル=107円)となった。EUの生乳生産がおおむね増加基調にある中で、バター生産が増加している(EU27カ国の2019年上半期のバター生産量は前年同期比2.5%増の116万5649トン(注2))(図17)ことから、2019年7月のバター価格は、100キログラム当たり383.24ユーロ(4万5606円、1ユーロ=119円)と、前月(同398.39ユーロ(4万7408円))に続き、2016年9月以来となる400ユーロを下回った。さらに、8月12日の週の価格は、同359.78ユーロ(4万2814円)となった(図18)。
 8月12日の週の100キログラム当たりのバター価格(注3)を米ドル換算で比較すると、EUは409.5米ドル(4万3817円)となり、オセアニアの416.3米ドル(4万4544円)、米国の515.3米ドル(5万5137円)を下回っている。

注1 : GDTとはニュージーランド最大の酪農協同組合であるフォンテラ社主催の電子オークションで、月2回開催される。
注2 : バターの生産量には、バター換算したバターオイルなどを含む。なお、ルクセンブルグのバター生産量は、欧州委員会の統計情報に公表されていない。
注3 : 欧州委員会の資料(EU Milk Market Observatory :World prices of dairy commodities)より。バター価格は、オセアニアは輸出(FOB)価格、EUは欧州委員会実施規則2017/1185に基づき報告された価格、米国はシカゴ・マーカンタイル取引所の現物価格(グレードAA)の価格。

 






 
価格の低下傾向がいつまで続くかに注目
 今後のEUのバター価格の動向を、ある業界団体は現在バターの生産量が多く、多くの実需者が乳業メーカーで多くの在庫を抱えているとみていることから、市場の動きがよくない可能性があり、今後数カ月間は、価格も現在に近い水準で推移するのではないかとみている。また、別の業界団体によると、バター価格が安値となっていることで、小売での需要が回復してきているという報告もあるとのことである。
 今後のEUのバター輸出の動向は、国際需給の動向にもよるが、価格の低下傾向がいつまで続くかに注目する必要がある。
 
(調査情報部 前田 絵梨)